アダプティブラーニングはどのような学習方法？
何かを学ぶために効率良く学ぶことも重要な要素です。アダプティブラーニングは一人ひとりの進捗度にあわせた学習方法になります。現代社会において価値観の多様化もあり、それぞれにあわせた学びを受けられるのはメリットが大きいです。アダプティブラーニングの効果を参考にしてください。
アダプティブラーニングとは？
アダプティブラーニングの言葉の意味
アダプティブラーニングの言葉の意味から確認しましょう。アダプティブラーニングというのは「一人ひとりの進捗度にあわせて最適化された学習方法や教材を利用する学習サービス」を意味します。
また、提供する仕組みを持つ学習エンジンやソフトウェアなどもアダプティブラーニングの意味に含まれているのです。アダプティブが「適応」、ラーニングが「学習」を意味していることから、日本では「適応学習」という言葉も使われているので、そちらも覚えておきましょう。
アダプティブラーニングの歴史
では、アダプティブラーニングが活用されるようになったのはどういった経緯なのでしょうか？アダプティブラーニングは教育業界のIT化が進む中で注目されるようになったのです。
ITを活用した教育は「EdTech」と表現されますが、日本の文部科学省も教育改革としてこの考えを推進するようになりました。価値観の多様化によって、教育もそれぞれにあわせた学習方法が理想と考えるようになったのでしょう。
そもそもアダプティブラーニングは1950年代に「コンピュータを利用して教育を支援できないか」という考えから生まれました。その後、1990年代にパソコンが一般家庭でも普及し、2000年代になると高速通信が可能になったのです。
こういった技術革新によってアダプティブラーニングによる、個別最適化された学習を広範囲で実現できるようになりました。日本国内でも2010年頃からアダプティブラーニングを導入する企業が増えており、今後もさらに注目の学習方法として注目しましょう。
eラーニングとの違い
アダプティブラーニングと同様に近年注目されている学習方法があります。それがeラーニングです。これはインターネットを活用した学習方法になります。eラーニングのメリットはネット環境がある場所なら、いつでもどこでも学習できる点です。
教材などはインターネットを通じてダウンロードして学習できるので、忙しい人や移動時間にも活用できます。こういった点からアダプティブラーニングはeラーニングに含まれる学習方法と考えてもよいでしょう。eラーニングでも学習の進捗状況などを管理し、成績を分析します。
ゲーミフィケーションとの違い
スマホなどでゲームを楽しむ人も多いですが、そういった要素を学習に取り入れるのもおすすめです。ゲーミフィケーションは、ゲームの要素をゲームではない分野に取り入れることを意味します。
例えばポイントによる特典もゲーミフィケーションです。また、会員限定によるサイトや交流も該当します。問題を解くことでキャラクターのレベルが上がる要素やステージをクリアするような形はモチベーションを維持しやすいのでおすすめです。
LMSとの違い
そしてLMSというものも存在します。LMSは学習管理システムを意味する言葉で、成績管理や教材配信などの機能を統合したシステムのことです。アダプティブラーニングを行う上でLMSが必要不可欠になります。学習状況などを分析し、課題を設定する上でLMSを活用していることを覚えておきましょう。
日本の教育現場でも導入されている
日本の教育現場でアダプティブラーニングは、少しずつ導入されて注目を集めています。個別指導の効果が上がっている中で、アダプティブラーニングは生徒一人ひとりに対して、適切なカリキュラムを提供できる方法です。いままでの学習方法ではどうしてもきめ細やかなサポートができませんでした。
その理由は、自主学習や塾などの学習内容を加味できない点です。学校以外で行っている学習に関する情報を得られないため、どうしても指導する側は全体を考慮したカリキュラムしか扱えない状態になります。また、個別に対応する時間も限られている点も問題といえるでしょう。
分析に関しても指導者の分析力や指導力に左右されてしまうので、生徒や保護者から不満がでることもあります。アダプティブラーニングやeラーニングのような形を取ることで、個々の学力に最適化されたコンテンツを配信できます。
また、昨今は新型コロナウイルスの影響もあり、在宅ワークやテレワークと同じく自宅学習の機会が増えました。アダプティブラーニングやeラーニングを使うことで、自宅でも高いレベルの教育を浮けられるのは大きなメリットといえるでしょう。
アダプティブラーニングのメリット
メリット①学習効果の最大化が期待できる
アダプティブラーニングを導入するメリットを確認してください。アダプティブラーニングを導入することで学資ぃ有効化の最大化が期待できます。苦手な科目やジャンルに対して、なぜ間違えてしまうのかを分かりやすく解説してくれるのです。
自分の中で間違える理由を明確にしてもらえることで、苦手意識を改善し、ステップアップしていけます。このようにマンツーマンの家庭教師が常にいてくれるような状態になるのが、アダプティブラーニングの大きなメリットなので、積極的に導入していきましょう。
メリット②指導品質の均一化と自動化に役立つ
教育現場の場でアダプティブラーニングが導入されるようになった背景でも解説しましたが、指導する側の能力の差を無くすことができます。アダプティブラーニングではeラーニングのシステムを使って、指導力が均一化されており、客観的なデータが活用されています。
指導品質の均一化とあわせて、さらなる分析によって指導を形式化して自動化にも役立っているのです。指導者の性格や指導法などの相性を気にしなくていいので、学習方法として導入を検討してください。
メリット③授業の質を高めることができる
アダプティブラーニングはLMSのシステムを使って、学習履歴のデータを蓄積していきます。学習者の様々なデータを蓄積し、個人個人にあわせた授業の質を高める機能があるのです。
パーソナルデータを蓄積し、AI分析を行って学習者の情報を可視化してくれます。eラーニングのような場面だけでなく、教師の指導の仕方にも役立てることができるでしょう。どのような声掛けやフォローを行っていくか、という指導方針の参考にも量できます。
メリット④過去の学習データを有効活用することができる
個人の学習履歴を一つ一つ整理するのは非常に労力がいります。そういった場合にアダプティブラーニングを使えば、膨大な学習データを蓄積して有効活用できるのです。
また、本人のデータだけでなく、様々な人の学習データを使って、学習のヒントやコツを客観的に示すことも可能になります。指導者個人の経験だけではまかなえない部分を、アダプティブラーニングはフォローしてくれる存在といえるでしょう。
メリット⑤教材やカリキュラムの改善に役立つ
AI分析を利用して、教材やカリキュラムの改善も行ってください。指導に使っていたデータがうまく学習に結びついていない場合も、アダプティブラーニングを使って見直すことが可能です。
メリット⑥知識インプットを効率化することができる
アダプティブラーニングは学習者にあわせた、オーダーメイドの学習プログラムといえます。学習の効率化につながり、必要なことをインプットしやすくなるのです。
遠回りな学習ではなく、必要な知識や適切な学習方法で学べれば他のことに時間を使えるでしょう。他の時間をアクティブな体験型の学習に使うなど、運動などの時間に使うことがおすすめです。アダプティブラーニングのメリットを確認し、時代にあわせた学習を行ってください。
アダプティブラーニングのデメリット
デメリット①モチベーションの維持が難しい
メリットの多いアダプティブラーニングですが、デメリットも存在するので注意しましょう。アダプティブラーニングは学習に対する自由度が高いため、人によってはモチベーションの維持が難しくなります。特にeラーニングの場合は一方通行な形になる点に注意が必要です。
そのため、研修や塾に通うのとは異なり、強制力や集中力が弱くなります。ある程度は自宅で学習するクセをつけてからアダプティブラーニングを取り入れるのが安全です。また、定期的に研修や面談をはさんでモチベーションを維持させましょう。
デメリット②導入コストがかかる
アダプティブラーニングを導入する際、デメリットとして初期投資にコストがかかる点が挙げられます。企業はネット環境などはある程度整っていますが、使用端末を用意してインフラ状況を整備しなければなりません。
自社でアダプティブラーニング用の教材を作成するのは困難なため、外部委託の費用が必要な点がデメリットです。通常の研修などにかかるコストなどと照らし合わせて、導入コストがどこまでデメリットになるか検討してください。
デメリット③不向きな学習分野がある
万能に見えるアダプティブラーニングですが、デメリットとして非言語領域の学習は不向きです。つまり、技能を取得するような分野は苦手で医療現場などには活かしにくいことを覚えておきましょう。
そのため、導入するまえにこのデメリットを理解し、アダプティブラーニングとの学習内容の相性を確認する必要があります。ビジネスにおいて需要なリーダーシップやコミュニケーション向上は別の形で身につけてください。
企業におけるアダプティブラーニングの効果
時間が取りにくい社員でも学習が可能になる
改めて企業におけるアダプティブラーニングの効果を確認しましょう。教育現場におけるアダプティブラーニングの魅力だけでなく、企業においてどのように活用していくか解説します。
企業においてアダプティブラーニングを導入すると、時間が取りにくい社員でも学習が可能になります。学習者の進捗状況や理解度などをAIが分析するので、最適な学習プログラムが提供されるのです。そのため、効率良く学べるので時間を取りません。
人材の早期育成が可能になる
時間を短縮できるということは、人材育成の時間を短縮できることを意味します。少子高齢化が影響し、どの企業も人材難に陥っており、限られた人材を早期に成長させる必要があるでしょう。そこでアダプティブラーニング導入すれば、人材の早期育成を行えます。
学習状況を簡単に把握することができる
何かを学んでいるときに、どの程度の進捗状況かは分かりにくいです。そういったときにアダプティブラーニングを導入していれば、学習状況を明確に確認できます。
この見える化によって、誰もが人材の学習状況を把握でき、苦手分野の克服も把握できるのです。学習者が逐一報告しなくても管理者がデータを確認すれば問題ありません。細かなフォローなどは直接言葉を通して対面で行ってあげましょう。
均質的な教育ができる
新しいプロジェクトを始めるときに、社員の足並みを揃えるために同程度の知識量を身につけることが大切です。アダプティブラーニングでは習熟度が確認できるため、均質的な教育にも対応しています。
通常の指導による教育では、どうしても指導者によって習熟度に影響が出ていました。個人差をできるだけ減らすことでプロジェクトも安全に進行できます。新入社員の知識の底上げにもおすすめです。
研修コストを削減することができる
新人教育などにおいて研修コストは企業の大きな悩みでしょう。自社の会議室などだけでなく、研修施設を借りて指導するのは時間も費用も手間もかかります。外部講師のコストも高価な上に、必ずしも効果が出るとは限りません。
デメリットの部分で触れたようにコミュニケーション系は苦手ですが、知識系を蓄えるならアダプティブラーニングはコストも手間も削減できるので積極的に導入しましょう。
企業でアダプティブラーニングを活用する方法
新人教育の場面で活用する
企業でアダプティブラーニングを活用することで、新人教育を円滑に行うことができます。新社員にとっては企業や業界に関係する基本的なことを学べるのは大きなメリットです。また、企業側も新人の個性やスキルを可視化できることで、今後の人員配置の参考になります。
タレントマネジメントの場面で活用する
一人ひとりに合った学習プログラムを提供する「タレントマネジメント」にも活用できるでしょう。性格や知識、スキルや経験にあわせて育成や教育を行えます。今までは人事担当が時間をかけて収集する必要がありましたが、アダプティブラーニングを使えば短期間で行えるのです。
社員としてはアダプティブラーニングによって、自分の細かなデータを企業側が把握してくれることで安心して働くことができます。アダプティブラーニングの情報を人事評価や人員配置に活かし、より働きやすい環境を作っていくことでモチベーションアップにつながるので、積極的に活用してください。
アダプティブラーニングの導入事例
導入事例①西日本旅客鉄道株式会社
アダプティブラーニングを導入した企業の事例を確認しましょう。西日本旅客鉄道株式会社（JR西日本）は、業務内容や知識の共有を行うために、新しいシステム導入を検討していました。
そこで導入されたのがアダプティブラーニングでした。運転マニュアルなどのペーパーレス化を検討し、社員により分かりやすく知識を得られるように整備しています。その結果、社員の学習意欲がアップし、反復学習も行われるようになったのです。
導入事例②株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJ銀行は複雑な銀行業務に関する知識の底上げを目指しました。全国に多数の社員がいる中で、新人教育はコストがかかる点や知識の均一化が重要な課題です。そこでアダプティブラーニングを導入して理解度の差が起きないようにしています。
同時に社員の苦手分野を分析し、その課題をクリアできるように問題を出題するシステムを導入しました。それぞれのスピードにあわせて知識を取得できるため、企業側も個人の理解度が深まっています。新人社員としても安心したサポートを受けられるので安心できる点も注目点です。
アダプティブラーニングの代表的なサービス
Core Learn（コアラーン）
アダプティブラーニングの代表的なサービスを確認しましょう。コアラーンは印刷大手の凸版印刷株式会社が提供しているサービスです。コアラーンでは習熟度別出題方式をメインにしており、それぞれの理解度や習得レベルにあわせた出題が行われます。
特にどういった点が理解できずに間違えたのかが分かりやすくなっており、同じミスが繰り返し起きないような出題が行われるのもポイントです。個別のフォローアップを行って、進捗状況も確認してくれるので安心して学習を続けられるでしょう。
Cerego（セレゴ）
セレゴはアメリカのCerego社が開発したシステムです。認知心理学や脳科学の研究が活かされており、記憶定着特化型の学習システムになっています。インプットした知識を定着できるように、適切なタイミングで復習できるのが特徴です。
問題形式も様々で、択一問題や複数選択問題だけでなく、穴あきや並べ替えタイプなども用意されており、学習のモチベーションが維持できます。先程紹介した企業の導入事例である、JR西日本もセレゴのシステムを活用しているので検討してください。
iKnow!
iKnow!は先程のセレゴを搭載した法人向け英語学習パッケージです。月額794円という低価格ながら、セレゴの反復学習システムを活用し、高い英語力を身につけられる点に注目しましょう。企業のグローバル化が進む中で導入することをおすすめします。
ノウン
ノウンはNTTアドバンステクノロジ株式会社が開発した、高機能オンライン学習プラットフォームです。コンテンツに手書きでメモやマーキングを行うことで、アナログとデジタルの両方の良さを取り入れています。
eラーニングやアダプティブラーニングのデメリットになるモチベーションの維持が難しい点を改善しており、自分専用のマニュアルを作成できるのです。デジタルドリルのような形になっているので、いつでもどこでも気軽に学べる点を活用しましょう。
Knewton
Knewtonはアダプティブラーニングのプラットフォームを提供している企業です。設定した目標にあわせて次に何を学習するのかを提示してくれるのが特徴になっています。また、学研やZ会などと提携しているので、蓄積されているデータ量の豊富さが特徴です。
すらら
すららはゲーミフィケーションを活用したeラーニング教材です。実際に塾や学校などの教育機関でも利用されており、信頼度が高い点に注目しましょう。また、すららは無学年方式なので、学年に関係なく学べる点が人気です。
レベルの高い人材はより高いレベルにステップアップできるので、学園や年齢に縛られない学習を行えるのはモチベーションアップにつながります。
Classi
Classiはベネッセとソフトバンクの合併会社であり、コミュニケーション機能が充実しています。アダプティブラーニングのデメリットであるコミュニケーション面での課題を改善しており、細かなケアが注目点です。アダプティブラーニングを活用して、学習データを管理できるのが強みになっています。
アダプティブラーニングを導入して学習効果を向上させよう！
アダプティブラーニングについて解説しました。アダプティブラーニングはeラーニングに含まれており、一人ひとりにあわせた学習方法です。ネットやAIを最大限に活用した学習方法なので、新人教育や社員全体の知識の底上げに活用しましょう！
