ストレッチ目標の意味を解説!メリットやデメリットは何か?
みなさんはストレッチ目標という言葉を知っていますか?ビジネスにおいて社員が適切な目標に向けてチャレンジするために、適切な目標を設定することは重要です。
そこで今回は、ストレッチ目標のメリット・デメリットや効果的な目標設定の方法、実際の導入事例を紹介します。「OKR」との違いについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ストレッチ目標とは?
ストレッチ目標とはどのような意味があるのでしょうか。ここでは、ストレッチ目標と関連のある「チャレンジ目標」との違いや「OKR」について紹介していきます。
手を伸ばしただけでは届かない場所に存在する目標のこと
ストレッチ目標とは、「手を伸ばしただけでは届かない場所に存在する目標」のことを意味します。ストレッチ目標は設定した目標を達成することが重要ではありません。それよりも目標を達成するために、従業員が試行錯誤しながら実際に実行することが大切なのです。
ストレッチ目標を活用することによって、自分の最大限の力を発揮することができます。実際に企業では部下の育成にも使用されています。ちなみにストレッチ目標は、アメリカのGE社が取り入れたといわれる教育法です。
「ストレッチ体操」と同じ原理
ストレッチ目標は「ストレッチ体操」と同じ原理です。ストレッチ体操は、ただ身体を伸ばしてストレッチするだけでは効果がありません。限界まで身体を伸ばして筋肉の柔軟性が高めることによって、関節の可動域が広がるのです。
ストレッチ目標もこれと同じ原理であり、簡単には達成できない目標をあえて設定することによって、部下のパフォーマンスとスキルを向上させます。
部下の育成に効果的
ストレッチ目標は、部下の育成に効果的な手法です。現場のほとんどの社員は経営層や管理職のように、全体を見通せる視点を持っていません。そのため、従業員は漠然として目標を設定しがちです。
そこで、部下それぞれの状況に合わせたストレッチ目標を与えることで、部下の能力を最大限に引き出すことができ、効果的に育成することができます。
チャレンジ目標との違い
ストレッチ目標とチャレンジ目標には、目標の難易度に違いがあります。ストレッチ目標は前述したとおり、背伸びをして届きそうな難易度の目標ですが、チャレンジ目標は達成しなくてもいいくらいの難易度の目標です。そのため、チャレンジ目標は組織の中で関心を持たれずあまり社員に浸透しないことがあります。
「OKR」の言葉の意味
OKRとは「Objectives and Key Results」の略語であり、高い目標を達成するための目標管理法です。OKRのObjectivesは「目標」、Key Resultsは「主要な結果」を意味します。
この手法は1970年代にインテル社が導入し、その後はGoogleやFacebookなど多くのグローバル企業でも導入されています。OKRの特徴は、企業と個人の目標をリンクさせており、企業・部門・個人という階層ごとに目標を設定します。
ストレッチ目標のメリット
続いて、ストレッチ目標のメリットについて紹介していきます。
メリット①従業員の能力を引き出す効果がある
ストレッチ目標は、手を伸ばしただけでは届かない場所に存在する目標です。そのため、普段の自分よりもより大きな能力を発揮しなければ目標を達成できません。ストレッチ目標を設定することによって、従業員のモチベーションを高めることができ、従業員の能力を引き出す効果が期待できます。
メリット②達成感を味わうことができる
ストレッチ目標を達成した際には、大きな達成感を味わうことができます。チャレンジする内容が難しいほど、より多くの努力を必要としますよね。人間は長い時間をかけてひたむきに努力し達成したとき、大きな達成感は感じます。
ストレッチ目標は達成が困難な場所に目標を設定するため、長期的に相当量の努力が必要です。もちろんトラブルやミス、事業の失敗などに直面する可能性も高まるでしょう。このような困難を乗り越えて目標を達成した際には、部下自身に大きな達成感を味わうことができます。
メリット③部下の成長に繋がる
ストレッチ目標を設定することは、部下の成長にも繋がります。ストレッチ目標を達成するために、従業員は現状を整理し、どのように達成するかを必死に考えチャレンジを試みます。
その過程で多くの経験を積むことができますし、結果的にその経験を自分のノウハウとして吸収できるでしょう。仕事のスキル面はもちろんのこと、部下の人間性の成長にも期待できます。
メリット④会社の生産性向上や業績アップに役立つ
ストレッチ目標によって成長する社員が増えるほど、会社の生産性の向上や業績アップに繋がります。ストレッチ目標によって、組織内に生き生きと働く社員がいれば、それに影響されてモチベーションの高い社員が増えるはずです。
やる気のみなぎったスキルの高い社員が仕事に取り組むことで、会社の生産性も大きく向上するでしょう。
ストレッチ目標のデメリット
ストレッチ目標のデメリットについて紹介します。このデメリットを理解した上で目標を設定しないと、社員から反対意見が出やすいので注意しましょう。
デメリット①無茶な目標になってしまうことがある
ストレッチ目標のデメリットとして、無茶な目標になってしまうことがあります。ストレッチ目標とは通常の取り組みでは達成できないレベルに設定した目標のことでした。その目標のレベルを高く設定しすぎると、単なる無茶な目標になってしまいます。
例えば、社員がどうチャレンジし努力しても達成できない売り上げ目標を設定したとしましょう。この場合は当然社員は目標達成できず、モチベーションが低下したり、体調を崩してしまうなどデメリットが発生する恐れがあります。
そのためストレッチ目標を設定する時は、定期的に部下へのヒアリングを行いましょう。モチベーションが上がりやすいちょうどいいレベルの目標を設定することが重要です。
デメリット②パワハラになってしまう場合もある
ストレッチ目標のデメリットとして、パワハラになってしまう場合があることも挙げられます。パワハラとは社会的に地位の高い者が、業務範囲を超え精神的および肉体的苦痛を与えて職場環境を悪化させる行為のことをいいます。
ストレッチ目標を達成させるために、上司が部下に対して暴言を吐いたり一人だけ別室に隔離したりとパワハラをする可能性があります。このようなパワハラを防ぐためには、 上司と部下との間で積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
効果的なストレッチ目標の立て方
ここでは、効果的なストレッチ目標の立て方を紹介します。ストレッチ目標を設定する際は、ぜひ参考にしてください。
部下の能力や取り巻く状況に沿った目標を設定する
始めにストレッチ目標を立てる際は、部下の現状を理解した上で目標を設定します。最初に設定したストレッチ目標に不備があった場合は、全てが失敗に終わってしまいます。
そのためストレッチ目標を立てる際は、部下が抱いている将来の目標を事前にリサーチしておきましょう。部下が抱く理想像と会社が望む成果との間でミスマッチをなくすことで、部下が高いモチベーションを保ちながら努力を続けることができます。
しっかり説明して十分に理解してもらう
ストレッチ目標を設定した後は、部下に対して説明する場を設けましょう。部下にきちんとした説明をせずに目標だけを伝えた場合、目標の高さに驚き、モチベーションが大きく低下してしまうデメリットが発生します。
それを防ぐために、部下にしっかり説明して理解してもらう場を設けるのです。 部下一人ひとりに「なぜこの目標を設定することになったのか」を説明し、「部下への期待」を伝えましょう。
マイルストーンを設ける
ストレッチ目標を立てる際は、マイルストーンを設けると良いでしょう。マイルストーンとは、プロジェクトを完遂するために重要な中間目標地点のことを指します。
ストレッチ目標は、達成するために長期的な期間を要するものが多いため、このマイルストーンは効果的な役割を果たします。マイルストーンを明確にすることで、部下はその地点までに行うタスクや仕事を進める方向性を決定でき、達成に向けて確実に行動することができるのです。
少しずつ目標を引き上げるようにする
ストレッチ目標を設定する際は、いきなり高い目標を立てるのではなく、少しずつ目標を引き上げる方法が効果的です。特に経験の浅い社員の場合、いきなり高い目標を伝えられたら戸惑ってしまうでしょう。
このような部下に対してストレッチ目標を設定する場合、まずは背伸びの量を減らしましょう。まずは比較的簡単な目標を与え、達成感を味わってもらうのです。
ストレッチ目標の導入事例
最後に、ストレッチ目標の導入事例を紹介します。OKRはGE社を始めとした、さまざまな企業で取り入れられつつあります。
導入事例①Google
ストレッチ目標の導入事例の一つ目は、インターネット広告最大手のGoogle社です。この会社がストレッチ目標を設定する際は、「具体的」「客観的」「達成する価値があるか」「達成度が60~70% 」の4点を押さえているか、社員と提案しながら決めていきます。
このストレッチ目標は全社向けに公開され、四半期ごとと1年ごとに全社ミーティングを行って評価を検証します。
導入事例②Chatwork株式会社
ストレッチ目標の導入事例の二つ目は、コミュニケーションツールとして有名な「チャットワーク」を運営しているChatwork株式会社です。同社はもともと、目標の達成率を人事評価と連動させる仕組みを取っていました。しかし、部下が保守的な目標を設定してしまうというデメリットがあったのです。
そこで、OKRを通して達成率を人事評価と連動しないように改正しました。その結果、社員は目標達成に向けてチャレンジすることができ、挑戦に前向きな企業に変化したのです。
導入事例③株式会社メルカリ
ストレッチ目標の導入事例の三つ目は、フリマアプリの「メルカリ」を展開している株式会社メルカリです。メルカリは、高難易度のストレッチ目標設定を推奨しています。社員が達成に向けてどのような行動をし、どのような結果だったのか、それが全体のOKRにどのように貢献できたかという指標が重視されています。
また、半年に1度の合宿を行っており、各チームごとにOKRを共有し、社内コミュニティを可視化。それによって、個人のモチベーションを維持することができています。
導入事例④Sansan株式会社
ストレッチ目標の導入事例の四つ目は、クラウド名刺管理サービス「Sansan」と個人向け名刺アプリ「Eight」を提供している株式会社Sansanです。
同社は3ヶ月ごとに、企業全体の優先事項を検討し、より社員のをモチベーションを維持しやすいストレッチ目標を調整できるようにしています。人事評価はOKRはあくまで参考情報としているのが特徴です。
導入事例⑤株式会社GameWith
ストレッチ目標の導入事例の五つ目は、ゲーム関連の動画配信・紹介・攻略という3つのコンテンツを提供している株式会社GamuWithです。同社はストレッチ目標の導入に際し、人事データをクラウド化して可視化を進めています。
あらゆるスコアを全社に公開し、数値に基づいて組織側の課題がきちんと把握できるようになっていることが特徴です。そのため、部下は上司から何を求められているかが明確になります。
導入事例⑥GE(ゼネラル・エレクトリック)
ストレッチ目標の導入事例の六つ目は、電気事業をルーツとする多国籍企業であるGE社です。当時のGEのCEOであったジャック・ウェルチ氏は、簡単に手の届かない場所、困難な場所に目標を設定することがより大きな成果を生み出すと考えました。そこでGE社は客観的に見ると不可能だと考えられるストレッチ目標を設定したのです。
ストレッチ目標を与えられたGE社の社員は、困難を乗り越えることで忍耐力や自信が鍛え上げられ、高い集中力で困難な目標に立ち向かう姿勢が身につきました。その結果、GE社は目覚ましい進歩をとげています。
導入事例⑦一般社団法人at Will Work
ストレッチ目標の導入事例の七つ目は、一般社団法人at Will Workです。この企業の特徴は、個人レベルのOKR取り入れており、導入した際に、何をしてどのような成果を挙げているのかを周りに表明します。この周りに宣言する、目標を透明化する、というのはストレッチ目標において重要です。
ストレッチ目標を活用して部下の可能性を引き出そう!
ここまで、ストレッチ目標のメリット・デメリットや効果的な目標設定の方法、実際の導入事例を紹介してきました。ストレッチ目標は従業員の能力を引き出す効果があります。
ストレッチ目標はGE社を始めとした大企業が積極的に目標設定法として取り入れています。経営層の方や人事担当者の方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。