財形貯蓄制度と退職金制度の仕組みを知りたい!
結婚や出産、マイホームの購入など、ライフステージごとにまとまったお金が必要になることも。このような場面でお金がないと困らないように、普段から計画的に貯蓄を増やしていくことが重要です。また、退職後は老後に向けた資産管理も始まります。
このように、まとまった資産を貯めたいときや、老後の資産確保したい時に活用したい制度が、財形貯蓄制度と退職金制度です。本記事では、財形貯蓄制度と退職金制度の種類や、メリットとデメリットをまとめました。
財形貯蓄制度の種類
まず初めに、財形貯蓄制度の種類を紹介します。財形貯蓄制度は、年金や住宅購入資金など用途ごとに種類が分けられています。それぞれの財形貯蓄制度の特徴を解説します。
財形貯蓄制度とは?
会社と国が連携して、社員の資産形成を促す財形貯蓄制度。あまり耳にすることのない財形貯蓄制度という言葉ですが、多くの企業がこの制度を利用し、社員の資産づくりを支援しています。
財形貯蓄制度は、昭和46年に勤労者財産形成促進法に基づき、制定されました。退職後に安定した生活を送るため、住宅を購入するためなど、会社によってさまざまな用途で活用されています。
財形貯蓄制度は、給料をうけとったらすぐに使ってしまう人や、自分1人ではうまく貯金ができない人にとって、おすすめの制度でもあります。
種類①一般財形貯蓄
多くの企業で導入されている、一般財形貯蓄。一般財形貯蓄は、財形貯蓄制度を導入している企業に籍を置く社員が対象となります。
一般財形貯蓄の利用目的には制限がなく、積み立て期間が原則3年以上が必須。一般財形貯蓄は、用途に制限がないため、自由に使用できますが、税金などの優遇措置はありません。
種類②財形住宅貯蓄
住宅の購入やリフォームは、多くの費用が必要となります。住宅の購入やリフォームの準備を目的とした、財形住宅貯蓄もあります。満55歳未満の労働者であれば、5年以上の積み立て期間が必要となります。財形住宅貯蓄は、貯蓄型と保険型の2種類がありますが、どちらも550万円まで非課税です。
種類③財形年金貯蓄
老後の貯蓄をしておきたい人には、財形年金貯蓄がおすすめ。 財形年金貯蓄は、老後に受け取る年金の準備を目的として導入されています。積み立て期間は5年以上で、55歳未満の労働者が利用できます。受け取りは満60歳以降となります。
財形年金貯蓄は税金の優遇措置が受けられるメリットも。保険型であれば385万円まで、貯蓄型であれば550万円までが非課税となります。
財形貯蓄制度のメリット
財形貯蓄制度のメリットをまとめました。財形貯蓄制度は、貯金が苦手な人を助けるだけでなく、さまざまなメリットがあります。財形貯蓄制度を利用することで、住宅ローンの負担を軽減することも可能です。
メリット①自動的に貯蓄することができる
財形貯蓄制度のメリットとして、自動的に貯蓄できるということが挙げられます。財形貯蓄制度は、毎月の給料やボーナスから自動的に積み立てを行います。そのため、毎月決まった金額を自動的に貯金できるため、資産管理が苦手な人にもおすすめ。
例えば、財形貯蓄制度を利用して毎月の給与から1万円、年2回のボーナス月に5万円貯金すると、10年続けることで240万円を自動的に貯蓄に回すことが可能になります。このような積み立て貯金は自分でも可能ですが、簡単に引き出せる環境であれば、お金が必要なときにすぐに引き出してしまうことも。
一方、財形貯蓄制度で貯蓄した資金を引き出すためには、会社や金融機関への申し立てが必要です。このような手続きが必要なため、すぐには引き出しにくく、貯蓄を守れるというメリットもあります。
メリット②非課税優遇措置がある
財形貯蓄制度は、一部非課税優遇措置があるため、銀行に貯蓄するよりも効率が良いとされています。財形貯蓄制度のひとつでもある、財形年金貯蓄は、満60歳以降に払い出しをした場合でも非課税措置が続きます。
例えば、1000円の利息に対し200円が課税され、受け取り金額は800円となりますが、一部の財形貯蓄制度を利用することで、非課税になり200円分の節税になります。金額が大きくなるほど節税できるため、財形貯蓄制度の利用が勧められています。
メリット③住宅ローンの負担を減らすことができる
財形貯蓄制度の財形住宅貯蓄を利用することで、住宅ローンの負担を減らすことも可能。住む地域や自宅のグレードによっては、膨大な住宅ローンを組まなければならないことも。このような時に、財形住宅貯蓄を払い出しし、住宅ローンの頭金に充てることで、ローンの負担を軽減できます。
また、財形住宅貯蓄を行っている勤労者のみが利用できる住宅ローンもあります。勤めている企業を通して、住宅ローンの申し込みを行うため、低金利かつ長期間の融資が受けられます。
融資の限度額は、財形住宅貯蓄残高の10倍以内で最大4000万円までの借り入れが可能です。また、購入する住宅やリフォーム代金の90%以内という規定もあります。
メリット④給付金を受け取ることができる
財形貯蓄制度を利用している勤労者は、一定のタイミングで給付金を受け取れます。給付金を受け取るためには、企業が財形給付金や財形基金制度を導入している必要があります。給付金を受け取ることで、目標の金額までの達成期間を短縮できます。
財形貯蓄制度のデメリット
財形貯蓄制度のデメリットを解説します。財形貯蓄制度の利用には、明確な資金計画を用意する必要があります。元本割れのリスクについても説明しているので、財形貯蓄制度を利用する際の参考にしてください。
デメリット①利用可否が会社によって左右される
財形貯蓄制度は、すべての会社で導入されているわけではありません。そのため、財形貯蓄制度が導入されていない会社に勤務している人は利用できません。
また、財形貯蓄制度のある会社で働いていても、退職すると自動的に解約されます。会社に勤めている限りは利用できる制度ですが、期間が限られている点もデメリットになります。
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄のメリットとして非課税優遇措置がありますが、途中で解約した場合は目的外の払い出しになるため、残高に応じて課税されます
デメリット②非課税の恩恵を受けにくいことがある
金地の低い財形貯蓄の商品は、非課税の恩恵を感じられないことも。財形貯蓄制度で積み立ては資金は、銀行などの外部で運用されることがほとんど。銀行によって金利は異なりますが、ほとんどの銀行の金利が0.1%以下です。
そのため、大きな額を貯蓄していた場合でも、利子がつかず、非課税の恩恵を受けられる金額もわずかになります。現在の低金利時代では非課税の恩恵は受けにくいでしょう。
デメリット③他の財形貯蓄に切り替えることができない
財形貯蓄制度を利用して積み立てを始めた場合、途中で他の財形に切り替えることはできません。3種類ある財形貯蓄制度ですが、すべての財形に並行して加入することは可能です。そのため、他の用途で使用できる財形貯蓄制度に切り替えたい場合は、新規で加入する必要があります。
もちろん、財形貯蓄制度に新規で加入するため、資金計画を練り直すことが重要。他の財形貯蓄制度に切り替えられないということを念頭に置いて、財形貯蓄制度の利用を検討しましょう。
デメリット④元本割れする可能性もある
財形貯蓄制度で積み立てられる商品は、勤めている会社が提携している金融機関によって異なります。保険や投資信託は元本割れするリスクがあります。
財形貯蓄制度で積み立てを行う商品は、元本が保証されていると勘違いする人も少なくありません。運用している金融機関によっては、元本割れの可能性もあるため、財形貯蓄制度の利用は、慎重に検討する必要があります。
退職金制度の種類
多くの企業で退職金制度が導入されています。退職金制度は、老後の資金を確保したい人におすすめ。退職金制度は数種類用意されており、退職金制度によって積み立て方法や、運用方法が異なります。
退職金制度とは?
定年退職を迎えた労働者に退職金を支給する制度として、多くの企業が導入している退職金制度。退職金制度は、国や法律によって明確なルールが定められていません。そのため、退職金制度を導入している企業であっても、金額や制度も企業によってさまざまです。
企業によっては、退職金制度を導入していないこともあります。退職金制度ひとつとっても、数種類あります。次は、退職金制度の種類を紹介します。
種類①退職一時金制度
退職金制度のひとつでもある退職一時金制度は、労働者が退職する際に一括で退職金を支給します。退職金の支給は1度だけで、1度目の支給以降は基本的に支給されることはありません。
この退職金制度を利用した場合、企業が内部で現金積み立てを行う必要があるため、支給時は支給額に応じて税金がかかります。
種類②確定給付企業年金制度
定年を迎える労働者が退職金を受け取る、確定給付企業年金制度。この制度は、保険会社などに年金資金を運用・管理を依頼します。万が一、運用に失敗した場合は企業が資金を補填する必要があります。
種類③中小企業退職金共済
多くの中小企業で利用されている、中小企業退職金共済。中小企業退職金共済は、会社独自で退職金を用意することが難しい企業のみが利用できます。中小企業退職金共済は、労働者ごとに掛金の設定が可能で、掛金は全額非課税となります。
中小企業退職金共済の支給金額は、勤務年数と掛金によって異なります。まとまった退職金を用意することが難しい中小企業でも、この制度を利用することで、労働者に対して一定の金額を保証することが可能です。
種類④企業型確定拠出年金制度
企業型確定拠出年金制度は、会社が毎月積み立てを行い、労働者が自ら資金を運用します。企業側が資産運用を行うことが一般的ですが、 企業型確定拠出年金制度では個人が責任を持って年金資金の運用を行います。
会社は掛金や運用方法を各労働者に任せているため、支払いの義務を負う必要はありません。運用に失敗して、資金が減少した場合も会社に責任はありません。補填の義務が発生しないため、会社も導入しやすい制度のひとつです。
退職金制度のメリットとデメリット
退職金制度のメリットとデメリットを解説します。退職時にまとまったお金を受け取れる退職金制度ですが、企業や従業員にとってメリットだけではありません。退職金制度のデメリットも把握し、しっかりと退職金制度の仕組みを理解しておきましょう。
企業側のメリット
企業が退職金制度を導入するメリットとして、優秀な社員を採用できるという点が挙げられます。退職金制度を導入することで、退職時に資金を受け取れるという目的があるため、社員が長く同じ会社で働く傾向があります。社員が長く働き続けると、優秀な人材も育ちます。
最近では、採用面接で退職金制度の有無を聞くほど、退職金制度は重要な制度になっています。退職金制度ありと記載しておくだけで、多くの人材を集められることもあります。
企業側のデメリット
退職金制度の企業側のデメリットとして、資金繰りの把握が難しいという点が挙げられます。退職金制度のひとつでもある退職一時金制度を導入している企業が感じるデメリットです。
退職一時金制度は、勤労者が定年退職する場合は、時期や払い出し金額がある程度把握できるため、あらかじめ資金の準備を行えます。しかし、勤労者が途中退職した場合、いつ退職金が必要になるか把握できません。急に多額の資金が必要になる可能性もあるため、資金繰りの調整が難しくなります。
また、退職金制度を導入している中小企業では、従業員が一斉に退職した場合、資金不足に陥ることがあります。退職金制度には、このようなデメリットがあるということを念頭に置いておきましょう。
従業員側のメリット
退職金制度を利用する従業員の最大のメリットは、老後の資金が保証されるということ。退職時に資金を受け取れるため、ある程度の老後の生活は、企業に保障してもらえます。退職金制度がない場合、毎月の給料やボーナスから積み立てておく必要があります。
また、自分で退職金制度と同額の資金を準備するためには、自ら資産運用を行う必要もあります。退職金制度を利用することで、自分で資産管理を行う必要がなくなるというメリットがあります。
また、退職金制度があると勤労者が定年まで、この会社で働きたいというモチベーションアップにもつながります。
従業員側のデメリット
退職時に退職金を受け取れる退職金制度ですが、退職時にしか受け取れません。在職中に急に現金が必要になった場合でも、退職金制度を利用できないため、そのような人には退職金制度がデメリットに感じることも。
会社によっては、退職金制度だけでなく退職金前払い制度を導入していますが、通常の退職金制度では、在職中に退職金を受け取ることは不可能となります。
財形貯蓄制度と退職金制度の仕組みを覚えておこう!
財形貯蓄制度と退職金制度について、詳しく紹介しました。財形貯蓄制度は、目的ごとに種類分けされており、給料やボーナスから自動的に積み立てしてくれるため、自動的に資産を増やせます。
退職金制度は退職時に資金を受け取れるため、働くモチベーションアップにもつながります。財形貯蓄制度と退職金制度の仕組みを覚え、将来のために活用していきましょう。