ハインリッヒの法則とは?活用方法とトラブルを未然に防ぐポイント

ハインリッヒの法則とは?活用方法とトラブルを未然に防ぐポイント

ハインリッヒの法則を上手く活用したい!

本記事では、ハインリッヒの法則について紹介します。ビジネスを進めていくには、リスクの管理やサービスをしっかりと考えましょう。しかし、これらを曖昧にしたままでビジネスを進めると、顧客の信用を失い、トラブルが発生して経営が困難になる可能性があります。

そのような事故が起こった際に欠かせない経験則が、ハインリッヒの法則です。ハインリッヒの法則の意味や、安全にビジネスを運営する際の事例なども掲載しているので、参考にしてください。

ハインリッヒの法則とは?

まずは、ハインリッヒの法則について紹介します。ハインリッヒは、交通事故や医療事故に関わらず、労働災害すべての危機管理に用いられる経験則のひとつです。また、ハインリッヒの法則の他にも、バード法則との関連性やドミノ理論との違いについてもまとめています。

労働災害の経験則のひとつ

ハインリッヒの法則とは、物損事故を扱う米損保険会社に勤めていた、ハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ氏が発表した労働災害の経験則のひとつです

ハインリッヒの法則は、「重大損害や重大な事故1件につき、軽微なトラブルが29件、さらにその背後に隠れた事故寸前の案件が300件ある」と言われています。それらをまとめて、1:29:300の法則と呼ばれる事もあります。

法則自体は1929年位に、ハインリッヒ氏が出版した書籍に掲載したものです。しかし、現在でも介護や医療、交通などの様々な分野で、危機管理対策や災害防止に活用しています。

また、製造業や建築業での日々の安全チェックや、オフィスワークでの軽微なミス防止など様々なビジネスで活躍しています。さらに、個人情報などの企業機密や、ネットワークエンジニアなどの情報セキュリティ用語として、使われるケースも多いです。

ハインリッヒの法則が注目される背景

ハインリッヒの法則は、メディアやインターネットの発達により注目を集めています。メディアの数が増えてきているため、消費者が自由に選択できるので、利用者が知らなかった事故や不祥事が増加しています

また、SNSの発展に伴い、企業や事業内の組織の不祥事も判明しやすくなったため、一気に拡散されるリスクが高くなった事も要因のひとつです。さらに、従業員のモラルの低下や安全管理のトラブルにより、経営の危機に陥っている会社が格段に上がっています。

そのため、ハインリッヒの法則の「1件の重大事故や災害に対して29の軽微な事故、300件を超えるアクシデントが存在する」という危機意識を徹底している企業が増えています。

「バードの法則」との関連性

ハインリッヒの法則が発表された、40年後の1969年に約1,750,000件を超えるデータから、バードの法則が導き出されました。アメリカの297社、1,753,489件のデータから、「ニアミス:物損事故:軽傷事故:重大事故= 600:30:10:1」という比率が示されています。

比率の内容は、重大事故の裏には10件の軽い事故があり、さらにその裏には30件の物損事故が発生しています。また、その物損事故の裏には600件のニアミスがあるという法則です。人命に関わる大きな事故を防ぐためには、日ごろの取り組みが重要と言えるでしょう。

ドミノ理論との違い

ドミノ理論とは、ハインリッヒが提唱した、労働災害を防ぐための法則の段階の事です。災害をなくすためには、事故を防いで、不安全行動や不安定な状態を作らないという理論です。例えば、人は様々な環境によって作られる特性を持っており、たくさんのミスを引き起こします。

そして、そのミスは大きな事件や事故の引き金を生み出し、災害となり怪我をする場合があります。また、ハインリッヒの法則は、労働災害のきっかけの88%がミスする可能性があると考える理論です。

ヒヤリハットの言葉の意味

ヒヤリハットとは仕事中の「ヒヤリ」とした事や「ハッ」とした事など、危ない状態が起こってたけど、大事故や災害に至らなかった状態を言います。ハインリッヒの法則で重視されているのは、重大な事故や災害の背景に数多くあるニアミスなどを防ぐ方法です。

日本のビジネスではこの軽い事故の事を、ヒヤリハットと呼び、職場の安全衛生に生かしています。

ハインリッヒの法則が活用される主な分野と事例

次は、ハインリッヒの法則が活用される分野と、その事例について紹介します。常に緊張感がある医療業界や、事故に遭遇しやすい交通業界など、ハインリッヒの法則を使った事例をまとめました。

分野①介護業界

介護業界は、少子高齢化に突入している日本社会において、人手不足や過酷な労働環境が注目を集めています。また介護業界は人命に関わる重大な事故に発展する可能性が高い事から、ハインリッヒ法則における、ヒヤリハット報告が活用されている分野です

介護側のインシデントや利用者とのトラブル、さらに、外的環境が重なると重大な介護事故に発展する可能性があります。ヒヤリハットによる重大事故を防ぐためにも、多数報告される個別事例を時間別、発生場所別、利用者ごとに集計しましょう。

それをもとに、危機管理対応マニュアルを作成、事例をまとめて、重大な介護事故を防止している企業が多いです。

分野②医療業界

病気やケガをケアする医療業界は、介護業界以上にハインリッヒ法則を活用した、医療事故防止施策が取り入れられています。目まぐるしいスピードで、医療技術が発展している現代だからこそ、ハインリッヒ法則が必須です。

医療行為は医学の知見から計画的に実施されるものですが、決定や判断ミスにより、意図した結果にならない事例もあります。命の危機に関わる重大な医療事故を防ぐために、ヒヤリハット報告やトラブル状況の分析が徹底的に活用されています

分野③交通業界

ハインリッヒの法則は、物損事故を扱う損害保険会社に勤めていた、ハインリッヒ氏が提唱した労働災害の経験則です。そのため、ハインリッヒの法則を最も活用しやすい分野が交通業界です。

危険運転や高齢者の運転による事故が社会問題となる中で、ハインリッヒの法則に基づいた事故防止施策は、大きな効果をもたらしています

急発進や急ブレーキ、突然の進路変更や度を越えた進路妨害は、死亡事故につながる重大なインシデントです。また、バスや電車などの公共交通機関の重大な事故は、人の命を犠牲にする可能性が高いので注意が必要です。

ハインリッヒの法則を活用するメリット

次は、ハインリッヒの法則を使用する際のメリットについて紹介します。ハインリッヒの法則を導入すると、従業員の意識を高める事ができ、組織の強化に繋がります。また、優良顧客を獲得することができるので、ビジネスにもおすすめです。

メリット①従業員の意識改革と組織強化に繋がる

ハインリッヒの法則では、重大な事故が突然起こるのではなく、小さなトラブルが積み重なって起こるものとされています。

現代では、不祥事や事故などの問題が明るみに出やすくなっているので、小さなトラブルが企業の存続を左右します。普段から重大な事故を起こさないためにも、小さな異常を見逃さないことが重要です。

普段の仕事から些細な異常を気にかけると、従業員の危機管理への意識を高められるので、会社の組織の強化に繋がります

メリット②優良顧客を獲得することができる

ハインリッヒの法則は、「大きなクレームが1件発見したら、300件の不満がある」と提唱されています。企業は、クレームの大小に関わらず、誠意ある対応で接する事が重要です。

また、軽微なクレームをしっかりと対応すると、後々の重大なトラブルを防ぐ事ができ、印象が良くなるので優良顧客の取得に繋がります

メリット③ビジネスチャンスの獲得に役立つ

ハインリッヒの法則は企業のリスク削減に活用しますが、問題に対する改善策を考える際に、新しいアイディアのヒントが得られる事もあります

小さな不満や意見に対してしっかり向き合う事が、目に見えない顧客のニーズを見つけるのに役に立ちます。ハインリッヒの法則を意識すると、顧客のニーズや需要に耳を傾ける事ができるので、ビジネスチャンスを獲得しやすいでしょう。

ハインリッヒの法則の具体的な活用法

ハインリッヒの法則の具体的な活用法について紹介します。インターネット戦略やクレーム対応などに導入する企業が増えています。

活用法①インターネット戦略と併用する

ハインリッヒの法則を活用するには、インターネット戦略と併用して使うのが最適です。顧客のニーズや価値観が多様化する中で、利用者の意見やクレームは、リスクマネージメントに繋がります

インターネットは顧客のクレームのほかにも、企業の成長促進にも使えるので、優れたツールです。ホームページ上に顧客からの要望や意見の受付窓口を設置し、企業と利用者双方のコミュニケーションツールとして使用している事例もあります。

さらに、掲示板を活用した顧客同士が疑問を解消しあう場所を提供している事例もあるので、インターネット戦略として使えるでしょう。

活用法②クレーム対応や回答マニュアルに活用する

ハインリッヒの法則は、クレーム対応や回答マニュアルの作成に大いに役立ちます。企業が把握しているクレームを「顕在クレーム」と位置付け、その背後には10倍以上の「潜在クレーム」が発生しています。

埋もれている潜在クレームが発生する前に先回りし、トラブル対応や回答マニュアルを徹底すると良いでしょう。マニュアルを作る事で、刑事事件を引き起こす、大きな事故のクレームの数を減らす効果があります。

安全に会社を運営していくためには、事例をもとに潜在クレームをいかに見つけて減らすかが重要です。

活用法③OJTでの教育指導に活用する

安全に作業を行うには、現場の従業員の能力や観察力が重要です。そのため、過信によるプロセスの省略やホウレンソウを怠ると、重要なトラブルを引き起こします。

これらの潜在的失敗を従業員に意識させるためには、OJTによる現場の教育指導が最適です。従業員が現場で気づいたことを業務の一部に取り込み、教えながら教育する方式のOJTがおすすめです。

そうする事でハインリッヒの法則やドミノ理論が重視する、日々の安全管理や不安全行動、状況の排除の行動に繋がります。現場で起こる潜在的失敗を把握して行動をし、危機管理対策に役立てるとリスクを減らせるでしょう。

個人情報や情報セキュリティ強化など企業が安全に運営していくには、業種に関わらず、OJTをしっかりと教育する必要があります

ハインリッヒの法則でトラブルを未然に防ぐためのポイント

次は、ハインリッヒの法則でトラブルを防ぐポイントを紹介します。安全にビジネスを行うには、小さなミスを最小限にし、コミュニケーションが大切です。

小さなミスや異常における報告ルールを作る

ヒヤリハットの早期発見には、従業員による報告が重要です。いつ、どこで、何をした時にミスが起きたのかを記載する報告書を提出するルールを作りましょう

小さなミスや異常を報告するのには、速やかな作成と提出、客観的な詳細が重要です。従業員に対して小さなミスの記憶が鮮明なうちに報告書を提出するように周知しましょう。

改善する担当者を決めて即座に対策できる体制を整える

トラブルを事前に防ぐためには、改善する担当者が必要です。担当者は報告書をもとに、発生した状況を振り返り、その原因を分析します。また、振り返りで大切な事は、客観的な状況の把握です。

どのような状況だったかを、事実確認に焦点を当てて発生のプロセスを分析しましょう。状況と原因を把握した後は、防ぐために対策と体制作りを実施します。

自社でトラブルが起きる可能性がないか確認する

ビジネスを取り組むためには、自社でトラブルが起きる可能性がないか、を確認する必要があります。また、同じような作業で行う会社で起きた事故のニュースを知った際は、自社での業務プロセスに置き換えて検証すると良いでしょう

ハインリッヒの法則を活用して事故を回避しよう!

ハインリッヒの法則は、多くの労働災害から導き出された経験則です。1件の重大なトラブルや事故の背後には無数の異常があり、それらを起こさないようにしましょう。

また、小さなトラブルのヒヤリハットは、運送業や建築業など様々な場面で使われる事が多く、早期発見して対処する事が大切です。さらに、会社でトラブルが発生した場合は、ルールをしっかり作り、改善して速やかに対応しましょう。

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