調整手当はどのような場合に支給される?状況別の調整方法や規定例

調整手当はどのような場合に支給される?状況別の調整方法や規定例
目次

調整手当の意味や残業代への調整方法などを紹介!

給与明細を見ていると、調整手当という項目を見かけることはありませんか?この手当は、毎月会社から支給される賃金に加算されて支払われています。しかし、その内容は会社ごとに規定されており、支給される基準や条件や意味は会社によって変わります。

そんな調整手当の意味や、他の手当との違い、支給の条件などを規定例をあげながら紹介。調整手当の意味を理解して、給与の内訳について理解を深めていきましょう。

調整手当とは?

基本給のほかに支給される手当のこと

調整手当は、会社から毎月支払われる基本給に加えて支給される手当の一つです。企業内における、年齢や入社順・能力別などによる従業員同士の給与格差のバランスを是正する役目を果たします。

企業によって支給要件が異なる

支給要件はもちろん、支給金額についても企業によって設定されています。規定例としては、初任給調整手当、残業代など追加手当として毎月支給するなど様々なケースで利用が可能です。

初任給調整手当の意味と背景

初任給調整手当は、各企業の賃金規定に定められている学卒初任給(基本給額)を変更することなく、相場の学卒初任給まで初任給の水準をあげることができる方法として利用されています。

この手法が登場した背景には、慢性的な人で不足により新卒採用市場における競合が年々激しくなっています。各企業は、適正な人員構成を維持させるために、新卒社員を採用していますが、企業の賃金規定に定める学卒初任給が他企業と比べて見劣りしてしまうケースも少なくありません。

しかし、規定例ないで定める支給要件内で初任給を引き上げてしまうと、同年齢の高卒・短大卒・専門卒社員や先輩社員との賃金バランスを崩してしまう可能性が出ていきます。

そこで、採用時の初任給として賃金規定の基本給を変えることなく、相場の初任給水準に引き上げるために初任給調整手当を利用します。このように、新卒採用者に対する賃金の提示においてこの手当は重要な意味を果たします。

調整手当が支給される主なパターン

従業員間の給与のバランスを保つ場合

年功序列的な賃金規定を採用している企業では、能力の高い若手社員を賃金で評価したい場合に調整手当が利用されます。調整手当で給与を調整することで、基本給は他の従業員と変わらないものの、能力高さの対価として特定の従業員をしっかり評価できるため、給与のバランスを保つことが可能です。

中途入社者の前職給与とのバランスを保つ場合

優秀な人材を確保するためにも、採用したい中途の求職者の給与は、前職と同等もしくはそれ以上の金額を提示しておかないと見劣りしてしまいます。そんな状況を打開するために、前職との給与バランスを保つために基本給に調整手当を上乗せ給与を支払います。

そうすることで、企業で規定した賃金制度を変更せずに給与を支払うことが可能です。更に、実質的に高い給与を支払われることになるので、求職者側のモチベーションを上げる効果を期待できます。

中途入社者の能力を見極めることができない場合

昨今、労働基準法では労働者保護の観点から、社員を容易に解雇することが出来なくなりました。企業側は、解雇できないからこそ、採用に置いて中途採用者の能力の見極めに慎重になりがちです。しかし、職歴や面接においてその能力を見極めることができない場合もあります。

見極めが難しい場合、期間を決めて基本給に調整手当を上乗せして支払いながら中途入社者の能力を見極めていきます。期間中に中途入社者の能力次第で、調整手当を取りやめ基本給のみにすることや、調整した手当分を基本給とすることが可能です。

人事制度を改定した場合

定期的に各企業では人事制度の改定を行います。改定を行った場合、基本給の等級格付けが変更になり、等級は変わらずに給与がダウンする場合があります。

結果的に、従業員が受け取れる毎月の賃金がダウンしてしまうので、一定期間の経過措置として、ダウンした分の金額を手当で上乗せし、前給与と同等の賃金が支払われます。このように、人事制度で改定した等級の基本給が下がった給与をカバーする際に調整手当を利用が可能です。

調整手当を残業代として支給する時の調整方法

調整方法①固定残業手当として支給する

就業時間以外に業務を行う際に、企業は残業代を従業員に支払わなくてはいけません。企業によっては、この残業代を従業員が一定時間残業することを前提とした固定残業代(みなし残業代)などの名称を利用せずに調整手当として支給しています。

調整方法②基本給の中に含めて支給する

通常の残業代であれば、月々で変動するため一般的に基本給に含まれません。しかし、毎月の固定残業代を調整手当として支給する場合、基本給に固定的支給項目として調整手当を含める・含めないでボーナスの算定根拠が変わります。

残業代を固定的支給項目として基本給に含めて支給した場合、固定的な給与としてみなされボーナスの算定根拠に含みます。

基本給に含めない場合は、固定的なものではなく流動的なものとみなされボーナスの算定根拠から外されて支給されます。このように同じ手当でも基本給に含む含まないでボーナスに影響がでてきますのでチェックが必要です。

調整手当を残業代として支給する時の注意点

企業側は固定残業代として、残業代を調整手当で支給するときには以下の点に注意する必要があります。企業内で規定した労働契約や就業規則、賃金規定などに明記したうえで、通常の労働時間に対する給与と区別させておかなくてはいけません。

規定で固定残業代について明確にしたうえで、従業員へ理解されているものでなければ、残業代そのものが不払いであると労働基準監督署などから指摘されかねませんので注意しましょう。

調整手当を減額する時の調整方法

調整方法①昇給額で吸収する

調整手当は、従業員に必ず支給されるわけではありません。支給されている従業員に対して不要であると企業側が判断するとその分の手当は減額になります。ここでは、調整されていた手当が減額となるケースを紹介していきますので、併せてなぜ減額するのかという意味も確認していきましょう。

基本給、仕事給、役職手当など、給与が昇給する場合、アップした同等の金額を調整手当から減額していきます。昇給による調整は、手当が0円になるまで継続します。このように、他の従業員との給与バランスを保つために調整手当を支払っていた給与が、適正な状態の給与になった場合、調整手当は不要となるので減額になります。

調整方法②保障する期間を決めておく

調整手当を減額して支給する場合、急に調整手当額を0円にすると従業員側からすれば収入が減ってしまうことになり不満がでるかもしれません。そのため、一定の補償期間を設けて、段階的に毎月の給与から引き下げていく方法もあります。

この補償期間は、調整手当をなくすための猶予期間というだけでなく、従業員が貰っている賃金相当額まで、実力アップさせる期限という設ける意味もあります。企業側だけでなく従業員側もその意図をしっかり理解して日々の業務を行いましょう。

調整方法③減額する基準を決めておく

調整手当は、急に0円に減額するのではなく、段階的に一定の金額を減額し最終的に0円にしていく手法もあります。この手法は、先ほど紹介した、昇給額で吸収する・保証期間を決めておく、と併用される方法です。

調整手当をマイナスにする時の調整方法

調整方法①給与を上げる

調整手当をマイナスにして支給する場合、社員から見れば毎月の賃金が減額されてしまうことになってしまいます。調整手当でマイナスになった給与に対し、企業側は減額になった金額分の給与を上げます。給与体系を見直し、それまで適正な給与でなかった従業員の給与を適正なものとして扱えます。

調整方法②本給に見合うグレードにする

調整手当をそのままマイナスの形にしてしまうと、従業員側がらから見れば賃金が減額されたことになりがちです。給与が減額されてしまうと、従業員のモチベーションが下がってしまい業務パフォーマンスが落ちかねません。

そこで、従業員のモチベーションを下げないためにも、調整金額で減額になった分を本給で上げることでカバーします。そうすることで、賃金が変わらないだけでなく、ボーナス算定根拠に昇給された分が組み込まれるため年収面でみると収入がアップする可能性がでてきます。

調整方法③マイナス調整給を支給する

調整方法として、マイナス調整給と言うものがあります。マイナス調整給は、不足している本給を補うものとして導入します。逆に、プラスの調整給は本給でオーバーした金額を補います。

このマイナス調整給の解釈で気を付けなくていけないのは、賃金をもらい過ぎたことへの調整給ではなく、不足していた金額への調整給です。給与明細ではマイナスの金額が表示されていますが、実際にその金額が支給されているわけではないことを頭に入れておきましょう。

このマイナス調整給は、理解を得にくいケースがあるため、早い時期に調整を完了させて、給与明細のマイナス表示を消す方がいいでしょう。

調整方法④一定期間のみイレギュラーな本給を容認する

調整方法では、一定期間を設けてあえて調整しない形で一定期間のみ給与を支払う方法もあります。これは、本給には年に1回昇給するため、従業員がその等級に到達するまでイレギュラーな本給として容認します。

この手法は、厳格な基準が定められている大手企業よりは、トップ意見が大きく影響する中小企業で導入しやすい手法です。

初任給調整手当を支給する時のポイント

給与支給の仕組みを壊さずに初任給を引き上げるために活用する

時代の相場に合わせた学卒初任給を支給するために、会社の定める給与の支給基準の仕組みを変えることは意外と難しい案件です。

そこで、基本給に初任給調整手当を加算することで、会社の定める給与の支給基準の仕組みを壊さずに時代に合わせた初任給の金額へ引き上げます。

初任給調整手当を支給する時の注意点

初任給調整手当を利用することで、時代の相場に合わせて初任給を毎月支給することで、優秀な人材を確保していきます。しかし、この手当を利用して初任給を提示するときには、初任給の水準が既に就労している従業員の支給基準から超えないよう注意しましょう。

なぜなら、企業には既に雇用している同年代の高卒・短大卒・専門卒の従業員や勤続年数が長い従業員がいます。その人たちとの給与バランスを考えながら、初任給調整手当を活用していかなければ従業員同士の不満がおこりかねませんので、企業側は十分に配慮していきましょう。

調整手当の運用方法と規定例

運用方法①調整手当の目的を明確にする

調整手当に関する運用方法と規定例を紹介していきます。まず、新たに調整手当を給与規定に導入する場合は、手当の目的を明確にしなくてはいけません。

意味もなく調整手当を設定してしまうと、給与規定の管理が甘くなり、毎月の給与支払いにおいて業務内のミスが発生しやすくなります。調整手当を導入する必要性の有無、導入する理由、他の方法での導入ができないか検討することや、メリットやデメリットを考慮したうえで導入しましょう。

運用方法②就業規則や給与規程に記載する

調整手当は、就業規則や給与規定に記載しておきましょう。詳細の内容については、会社が必要と判断した社員に対して調整手当を支給する。というように、無理に明確な文言で記載するのではなく、曖昧な表現で記載でもいいでしょう。

給与明細では、基本給と混同されないためにも、分類して記載するのがルールとなっていますので気を付けてください。

調整手当を盛り込む時の規定例

調整手当の文言を盛り込むときの規定例としては、給与の構成や手当を記述する欄に記載しておくといいでしょう。もちろん、調整手当という項目を独立させて記載しても問題ありません。規定例としては、先ほど紹介したように、会社が必要と判断した社員に対して調整手当を支給する。というような内容で差支えありません。

もし、調整手当の支給要件を規定に定めるときは、その内容を記載しておきましょう。支給要件を記載する際の規定例としては、固定残業代としての調整手当、中途入社する社員に対する調整手当、新卒の新入社員に対する調整手当というように、具体例を記載しておくとよりわかりやすくなります。

調整手当を上手く活用しよう!

調整手当は、企業内の規定例を変更させることなく、従業員一人一人の能力や企業への貢献度などを評価して適正な給与を支払うこともできます。その用途はフレキシブル度が高く、手当を付けることで、従業員を評価していることを伝えることができます。

企業・従業員の双方が、毎月支払われる基本給と調整手当の意味をしっかり理解することで、更に良好な関係を築く効果も生まれますので、適正な形で利用していきましょう。

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