経営戦略の定義や作り方は?代表的なフレームワークや成功事例も!

経営戦略の定義や作り方は?代表的なフレームワークや成功事例も!
目次

経営戦略の定義や作り方などについて詳しく解説!

現代社会は、少子高齢化や人口減少など様々な問題を抱えています。そのような問題に加え、中国やアジア諸国の急成長で国際競争も激化し、いままでの経営の仕方では利益を上げるのが困難になってきました。

そこで重要なのが、適切な経営戦略です。時代や社会の流れを把握し、自社の経営状況を分析した上で、理想の実現に向けた経営戦略を立てることが、これからの社会を生き抜いていくためには重要になってきます。経営戦略の定義と具体的な経営戦略の作り方を見ていきましょう。

経営戦略の主な定義と現状

経営戦略の定義

経営戦略の定義は簡単に言うと文字通り経営に関する戦略です。元々は軍隊用語として使われていた英語を訳して、経済の分野で使用されるようになりました。

現代社会の定義としては、「企業が経営環境や企業間競争の中で中長期的に生き残り、理想の実現に向けて成長していくための行動方針や戦略」とされています。

生き残りのためには、四大経営資源と呼ばれるヒト・カネ・モノ・情報がどれだけ揃っているかを把握し、分析することが必要です。そのうえで理想と現実のギャップを明らかにし、実現にするために必要な経営戦略を練っていきます。

経営戦略の策定は民間企業に限らず、行政や社団法人などあらゆる組織で重要なプロセスといえるでしょう。

経営戦略の現状①企業の数だけ経営戦略が存在する

経営戦略を策定するには、現在の事業環境の分析が不可欠であり、競争社会での生き残りのためには、競合企業との差別化が必要です。また、その企業の経営理念、将来へのビジョンも企業により千差万別でしょう。

経営戦略の策定に必要なポイントである上記の3点は企業それぞれ違います。そのため、経営戦略は企業の数だけ存在するといえるでしょう。

経営戦略の現状②優先順位をつけて戦略を打ち出す必要がある

立案した経営戦略に使える経営資源は限りがあるので、優先順位を付ける必要があります。経営戦略を打ち出す時、「強み」を活かした戦略にするか「弱み」を克服する戦略にするかの優先順位をつけることが重要です。

現在の事業環境を分析してわかった「強み」や「弱み」のうち、生産方式が連続生産型の場合は「弱みの克服」を優先し、独立生産型の場合は「強みを活かす」戦略を優先するとよいでしょう。

経営戦略の現状③将来の予測を加味することも重要

経営戦略で分析、差別化の次に必要なのが、経営ビジョンの実現に向けての行動方針を示すことです。掲げた目標を将来実現できるかどうか予測をし、加味することも重要でしょう。

実現が難しい目標の場合、社員のモチベーションは下がってしまいます。将来の予測を加味した経営戦略を作るようにしましょう。

経営戦略と関連用語との違い

経営理念との違い

経営戦略と共に、競争社会で生き残ることができる企業経営の羅針盤となるのが経営理念です。経営理念の定義は企業活動の長期的な目標を文章で表したもので、精神的な基盤となる考えとされます。

会社の存在意義を内外に示した経営理念を基に理想の実現に向けて戦略を練るのが経営戦略です。そのため、しっかりした経営理念は効果的な経営戦略を策定するために不可欠と言えるでしょう。

経営戦術との違い

ビジネスを成功するための企業経営において経営戦略と共に用いられる言葉が経営戦術です。戦術は、元々軍事用語で戦闘において勝利するために最も効率的に戦闘力を運用する術と定義されています。経営戦術は企業活動の中で最も短期で効率的な運用をする具体的な行動です。

経営理念を実現するための目的が経営戦略です。その経営戦略を達成するために日々の業務を改善したり効率化する手段やアクションが、経営戦術と言えます。そのため、まず経営戦略を策定してから経営戦術を立てるようにしましょう。

経営計画との違い

企業が限られた経営資源を有効活用して経営を考えるベースとなるのが経営計画です。経営計画は、企業において、経営目標を達するための行動予定と定義されており、5~10年程度の長期経営計画、3~5年程度の中期経営計画、1年の短期経営計画の3つに分類されます。

経営戦略同様、目標を実現するために策定しますが、経営計画では財務数値やキーパフォーマンスインジケーターなどで数字で指標を表すことによって、達成度を数値で測ることができます。

経営計画を策定することによって、会社を維持・成長することができ、会社内で目標を共有することができます。また、対外的に公開することで、利害関係者との関係強化にも結び付くでしょう。

マーケティングとの違い

企業を存続・成長させるために重要な活動の1つにマーケティングがあります。マーケティングの定義は商品やサービス、情報をより効果的に届ける仕組みを作る活動のことです。

マーケティングは一定の商品やサービスがより多く売れる仕組みづくりですが、経営戦略は会社全体の目標を達成するための戦略を立てる活動です。そのため、マーケティングは経営戦略を達成するための機能戦略活動のうち、お客様と直接関係のある部門と言えるでしょう

経営戦略の作り方

作り方①事業の可能性を考える

経営戦略の作り方で最初に必要なのが、事業の可能性を考えることです。まず、現在ターゲットにしている顧客を明確にし、現在の戦略が顧客が期待するニーズに合っているのか、そのニーズを満たすためにはどのようなコアコンピタンスが必要かを分析します。

そこから、現状の自社の状況でどれだけの収益を得ることができるのか、収益をアップできる可能性がどれだけあるのかを考えます。そして収益拡大の可能性がある場合は、成長するためにはどのような戦略が必要かを考察していきましょう。

具体的な成長戦略の作り方としてまず、競合他社にはない独自性を生み出せる方法を考え、競争優位性を構築します。また、自社の強みと弱みを把握し、強みをいかし、弱みをフォローする戦略を練る経営戦略の作り方をすることで、成長の可能性はさらに拡がるでしょう。

作り方②コンセプトを明確にする

経営戦略の作り方で企業の可能性を分析した次の段階で行うのが、その成長可能性を最大限に実現するためのコンセプトを明確にすることです

コンセプトは何らかの意図を込めて新しく物やサービスを制作する際に基本になる考え方、思想と定義されています。コンセプトを明確にすることにより、社員が方向性を共通認識でき、それぞれの役割に応じた良い仕事に取り組むことができます。

コンセプトの作り方として、まず「誰に」提供するのかを明確にしましょう。この「誰に」を明確にするためには自社の強みをいかした事業方針を決定づけておく必要があります。「誰に」提供するのかが明らかになった次には「5W2H」を具体的に考察します。

「5W2H」とはWhy(なぜ)、What(何を)、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、How much(いくら)、How(どのように)のことで、コンセプトの作り方としてはこの順番に明確にしていきましょう。

「5W2H」の観点でコンセプトが明確になったところで、そのコンセプトが長期的な自社の経営戦略に適合しているかのアナリシスが必要です。

具体的には①複数の部署間の相乗効果が生み出されているか②自社の目標の実現に向けて適切であるか③自社の持続的な成長を促す内容であるかといった視点で分析していきます。

コンセプトが自社の経営戦略に適切であり、持続的な成長に繋がると判断した場合は、言語化して社内外にアプローチしていきましょう。

作り方③スケジュールを立てる

経営戦略の作り方で最後に重要なのがスケジュールの立案です。明確にしたコンセプトに対して現在の経営資源を配分し、事業領域を設定していくかの方向付けが必要でしょう。

まず、目標実現のための期間を設定し、その期間をさらに細分化してスケジュールを立てていきます。スケジュールは、リスク回避のために1パターンではなく複数パターン立案するとよいでしょう。

スケージュールを立案する際に経営資源には限界があるので、現状を把握した上でどの部署にいつ、どのくらい、何を配分していくかを考慮します。特に資金の配分は重要で、無駄のないように慎重に計画を立てる必要があるでしょう。

経営戦略の作り方に従ってスケジュールが立てられたら、あとは目標に向かって経営戦略を実施していきます。場合によっては戦略通りにいかないこともあるので、その際は軌道修正する臨機応変さも必要です。

経営戦略の代表的なフレームワーク

有効的な経営戦略を策定するためには、有益な分析法であるフレームワークの活用がお勧めです。フレームワークには様々な種類がありますが、経営戦略を立案するために効果的なフレームワークを紹介します。

フレームワーク①SWOT分析

SWOT(スウォット)分析は強み、弱み、機会、脅威という4つのカテゴリーを軸として現状分析を行い、経営戦略を策定するフレームワークです

「強み」は会社の存続・成長に貢献している要因、「弱み」は会社の目標達成の妨げになっている要因で会社の内部環境に存在し、「機会」は会社にプラスに貢献する可能性がある要因や変化、「脅威」は会社の業績アップの妨げになる要因や変化で会社の外部環境に存在します。

それぞれのカテゴリーをエンターテインメント業界の(株)オリエンタルランドの事例を紹介します。

「強み」は世界最大のテーマパークであるディズニーの運営方法の継承とブランド力、自己資本比率の高さと広大な土地の開拓などで、「弱み」はインフレによるコスト上昇や埋立地のため、地震による液状化などの災害リスクなどです。

「機会」は外国人観光客の増加や交通機関や周辺宿泊施設の発展などで、「脅威」は少子高齢化による来場人口減少や国内外のテーマパークの増加などと言えるでしょう。

これらのカテゴリーを4つのボックスに分けて掛け合わせて分析することによって経営戦略の構築に活用していきます。

フレームワーク②ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は特定の業界の収益性を5つの要素を基盤に構造分析を行うことによって行うフレームワークです。5つの要素とは「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「既存企業との競合」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」を指しています。アパレル業界のユニクロの事例を見ていきます。

「買い手の交渉力」は、オークションサイトなどでの転売と国内の人口減少により上昇しています。「売り手の交渉力」では、近年中国や東南アジアに自社の工場の人件費が上昇しているので上昇傾向にあると言えるでしょう。

「既存企業との競合」ではアパレル業界は競合の多い業界なので、ユニクロの強みである低価格高品質の維持が今後も必要です。

「新規参入の脅威」は、大量のデータを活用して顧客開拓をし、価格破壊をしているネット通販が脅威になっています。「代替品の脅威」は、購入せず、レンタルするサービスが若い人を中心に広がっていることでしょう。

このようにファイブフォース分析をすることによって、現在の課題が明確になり、課題に対する経営戦略を考察する手掛かりになります。

フレームワーク③3C分析

3C分析は市場、競合、自社のそれぞれをリサーチして自社を取り巻く環境分析をするフレームワークです。市場では顧客のニーズや消費行動、業界の市場規模と成長性、競合では競合の特定とその競合ビジネスの結果やリソース、自社では自社のビジネスの特徴や資本力・投資力、経営理念に対する現状などを分析します。

3C分析によって把握した情報をFWOTを組み合わせるなど、複数のフレームワークを組み合わせることによって、さらに明確な分析ができます。その分析結果を、経営戦略の策定に生かすと良いでしょう。

経営戦略の考え方に影響する代表的なキーワード

コアコンピタンス

コアコンピタンスの定義は、企業が顧客に対して競合他社には真似できない企業の中核となる能力のことです。他社よりも優位な能力であるコアコンピタンスを確立することで、攻めの経営戦略を策定することができます。

成功事例としては、自動車メーカーのホンダは他社が真似できないエンジン技術の能力を企業の経営戦略に活かし、会社の業績を伸ばしていきました。コアコンピタンスを活用した経営戦略は、自社ならではの強みを活かすので、成功に繋がりやすい戦略です。

企業遺伝子

企業遺伝子(企業DNA)とは、企業において独自の魅力、価値観、信念が長期に渡り共有され、受け継がれていることです。企業の合併など経営環境の変化の激しい現代において、企業遺伝子の伝承は見直されています。

経営戦略を策定するうえで、その企業ならではの企業遺伝子を考慮して目標を掲げることは、競争社会の中で他社とは違う独自の成長をするために重要でしょう。

イノベーション

イノベーションの定義は、新しいものを生み出して変革を起こすことによって経済的な価値を生み出すことです。経営においてのイノベーションには新しい生産物の創出、生産方法の導入、市場の開拓、資源供給の獲得、組織の実現の5つが挙げられます

ヤマト運輸の宅配便や任天堂の家庭用ゲーム機、セブンイレブンのバーコードを使ったPOSレジシステムなどがイノベーションの成功事例です。

インテグリティ

インテグリティとは一般的には誠実、真摯、正直さなどと定義される言葉で、ビジネスの世界では組織のリーダーやマネジメントに求められる資質や価値観を示す表現として使われます。

健全な組織運営にはインテグリティに基づく行動をとることが大切です。誠実で信頼される会社にするためには、経営戦略にもインテグリティを意識した戦略を構築していく必要があるでしょう。

サステナビリティ

サステナビリティの一般的な定義は「自然環境や人間社会などが将来にわたって機能を失わず良好な状態を続けていく持続可能性」です。ビジネスにおいては、企業が地球環境・社会活動・経済活動で将来に渡って利益を上げ続けるためのシステムやプロセスを指します。

最近、サステナビリティは企業の社会貢献活動として注目されています。社会的責任の観点からも企業のイメージアップのためにサステナビリティを経営戦略に盛り込むことが必要でしょう。

アントレプレナーシップ

アントレプレナーの定義は事業を立ち上げて起業をすることで、それにマインドを意味するシップを加えたアントプレナーシップは競争社会の中で新しいビジネスを創出するために欠かせない精神です。

アントプレナーシップの精神は新規事業の創造や新商品の開発の際に、役立ちます。また、リスクにも打ち勝っていく強い姿勢や発想にも効果的です。この精神は経営戦略を立案する際にも目標達成のために有効でしょう。

経営戦略の成功事例

事例①ニトリホールディングス

経営戦略の成功事例として、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」を目標に近年業績を拡大しているインテリア小売業のニトリホールディングスを紹介します。

ニトリの成功は同業他社にない企画から製造、販売までの機能を統合したSPAというビジネスモデルを構築してコスト優位性を確立したことにあります。

2013年から10年は「グローバル化と事業領域の拡大」を掲げ、海外出店と経営基盤再構築を経営戦略としてさらなる利益の確保と向上を目指しています。

事例②エイチ・アイ・エス

特定分野に特化することによって経営資源を集中し、競争の激しい旅行業界で成功した旅行会社エイチ・アイ・エスの事例を紹介します。

エイチ・アイ・エスは創業以来、格安航空券の販売に目をつけ、早くから「エイチ・アイ・エス=安くて安心」というブランドイメージを消費者に植え付けることによって業績を伸ばしました。

また、ピンチの際には社内で事業提案を募集し、その中から検討して新規事業を手掛けます。臨機応変な成長戦略の変更も成功の決めてと言えるでしょう。

モスフードサービス

差別化戦略によってファーストフード業界3位まで上り詰めたモスフードサービスの成功事例を紹介します。モスフードサービスは、「食を通じて人を幸せにすること」を経営ビジョンとし、他社との差別化を図るため価格設定を高めにし、品質にこだわった商品の提供に取り組みました。

2019年からの中期経営計画では、商品やサービスを柔軟に選択できる店舗の開発や海外事業の成長へ投資をするとともに、デジタル技術活用の推進と働き方改革の推進を戦略として掲げています。

経営戦略に関するおすすめ書籍

書籍①グロービスMBA経営戦略

経営戦略の立案と実行に役立つ基礎知識を体系的に詳しく解説している書籍です。発売以来改訂を繰り返しているので、現在の社会情勢に適した成功事例が紹介されています。

経営戦略に活用できるフレームワークの事例も紹介されており、具体的でわかりやすいので、初めて経営戦略の策定に着手しようとしている経営者におすすめです。

書籍②戦略策定概論ー企業戦略立案の理論と実際

経営戦略の策定について、理論的な定義から活用できるフレームワーク、具体的な成功事例まで詳しく解説しています。著者が戦略コンサルタントのため、蓄積した知見に基づいた実践的な経営戦略の立案方法を紹介している書籍なので経営戦略に関する教科書として役立つでしょう。

書籍③企業戦略論【上】【中】【下】

アメリカのビジネススクールで教科書として使われている書籍で、3巻構成で豊富な成功事例を基に経営戦略の主要な理論が解説されています。

自社の競争力を見出すフレームワークが紹介されているので、自社の強みを発見でき、そこから成功事例を参考に自社の経営資源に合わせた適切な経営戦略を策定できます。経営戦略を体系亭に学びたい人におすすめの一冊と言えるでしょう。

経営戦略を成功させよう!

急速な社会情勢の変化と厳しい競争社会を生き抜くためには、他社との差別化を図った、自社にとってより適切な経営戦略の立案が不可欠です。

フレームワークを上手く活用して現在の自社の経営環境を分析をし、千差万別の成功事例を参考にして、限られた経営資源を有効に活かした経営戦略を策定します。そして、その経営戦略の実現が、自社の成長につながり、企業理念の実現に近づく近道といえるでしょう。

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