組織市民行動とは?仕事の上でのプラス効果や促す方法について!

組織市民行動とは?仕事の上でのプラス効果や促す方法について!

組織市民行動を職場に浸透させたい!

自発的に誰かを支援することで、組織全体のモチベーションや思いやりがアップします。近年は働き方改革が進んでおり、成果主義による影響から見返りのない援助が減少しているという見方もあるでしょう。そういった中で組織市民行動を意識して、企業をより良い方向に導いてください。

組織市民行動とは?

組織市民行動の言葉の意味

組織市民行動というのは、組織に所属する人が報酬などの見返りを求めずに、組織全体の効率を促進するために自発的に他者を支援する行動」を意味します。組織市民行動は英語の頭文字を取ってOCBとも表現されて、「役割外行動」とも表現される行動です。

困っている人がいたら助ける、誰も手を付けていないままになっている作業を代わりにやってあげる、職場にゴミが落ちていたら拾ってあげる、という行動を無償で行うことが組織市民行動に該当します。

組織市民行動の定義

従業員が行う任意の行動のうち、彼らにとって正式な職務の必要条件ではない行動で、それによって組織の効果的機能を促進する行動。その行動は強制的に任されたものではなく、正式な給与体系によってほしょうされるものではない。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaas1986/15/1/15_1_1/_pdf

組織市民行動の定義はかつては役割外行動、という言葉が使われていましたが、Organが1988年にこのように組織市民行動の定義を提唱しました。定義の中にある「任意の行動」は、公的に決められた役割や職務として遂行すべき要件ではない行動を意味しています

定義から分かる組織市民行動の条件

組織市民行動の定義から分かる条件として、いくつかのポイントが挙げられます。まず、職場において従業員個人の自発的な行動によることが大前提となっています。また、行動に対して賞罰や報酬が存在しないことも重要です。

他には会社の職務記述書に含まれていない、行動に関する訓練を受けていないことも組織市民行動の条件に該当します。最終的にその行動によって組織の効果的機能が促進されることも条件といえるでしょう。

組織市民行動の重要性

後ほど詳しい具体例を紹介しますが、組織市民行動を取り入れることによって会社や職場に重要な影響を与えます。その重要な影響は近年の働き方改革により、成果主義やジョブ型雇用が増えたことが関係しているのです。

日本では長年に渡り、年功序列型や終身雇用制度が一般的でした。メリットもある制度ですが、近年ではそのデメリットを改善する会社が増え、成果主義やジョブ型雇用に切り替えるようになったのです。しかし、このことで「結果につながらない、担当が不明確な物事が放置される」状態が増えています

職場でこの誰にも割り当てられていない仕事が増加すると、次第に効率の悪い環境になってしまうのです。自分に割り当てられた仕事を行うのは当たり前ですが、そうではない仕事を自然とみんなで解消していける職場環境にするために、組織市民行動が大きな意味を持つで参考にしてください。

組織市民行動が仕事に与えるプラス効果

組織市民行動が職場に浸透すると業績を向上させる、というプラス効果も確認されています。日本大学の田中堅一郎教授は「組織市民行動と組織全体の業績はかなり高い相関関係を示す」と考えているのです

積極的に職場に組織市民行動を浸透させれば、組織全体にプラス効果があるといえるでしょう。組織市民行動を取り入れるのは、どのような職種や業界でも可能なことなので、会社が具体例を含めて意識改革を行っていくことが求められます。

組織市民行動の尺度と具体例

組織市民行動の尺度①愛他主義

組織市民行動の尺度と具体例を解説します。まずは愛他主義を職場に浸透させることが重要です。愛他主義の定義の尺度は、なにか問題を抱えた同僚を助ける気持ちから成るもので、他人の幸福や利益を行為の目的とする主義を意味します。

この考え方は組織市民行動を取る要因のうちで最も多いと考えられており、重要な尺度として検討していく必要があるでしょう。愛他主義の具体例として、病気で欠勤した同僚の代わりにその業務を請け負う、パソコンや機械が苦手な上司に操作方法を教えてあげる、というものが含まれます

問題の内容に関わらず、他人が困っていたら無償で助けてあげられる愛他主義の精神を会社全体で広めていきましょう。そうすることで自然と職場でお互いを助け合う雰囲気が生まれて、組織市民行動が当たり前になるのです。

また、こういった考えは利他主義と表現されることもあります。自分の利益よりも他人の利益を優先する行動は簡単ではありません。時にはお節介や媚びていると勘違いされることもあり、相互理解も重要な要素になるでしょう。

組織市民行動の尺度②誠実性

誠実性も組織市民行動の尺度として重要な要素です。社会人としての常識を遵守する行動が取れることは、会社にとって最小限の役割要件をはるかに超えた任意行動につながります。

仕事における誠実性は出勤や規則への服従、休憩に関するものが関係し、ついついなし崩し的にいい加減になりやすい部分です。その尺度を見定める行動として、外回り中に本来とは関係のない休憩を取る、休日出勤をする際に会社規定外の服装で勤務するかどうか、といったものが含まれます

基本的な会社のルール以上の行動を自発的に行うことが誠実性の尺度に関係しており、定時よりも早く出社して雑務をこなすような行為も該当するでしょう。勤続年数が伸びてくると気持ちが緩んで誠実性が失われることがああるのです。

そうならないように具体例を参考に日頃の自分の行いを振り返りましょう。初心に帰ることで組織市民行動の基本的な部分を得られるようになります。

組織市民行動の尺度③スポーツマンシップ

不平不満を言わない、というスポーツマンシップを持つことも重要な尺度です。言い換えれば、働く上では多少なりとも不平不満を感じることがあるけれど、それをわざわざ口に出さないことを意味します

しかし、ブラックな職場環境を我慢することを意味するわけではなく、愚痴を言って職場の雰囲気を下げるような行為を避けることを意味する考えです。

具体例としては仕事が繁忙期で残業続きになったときに「この会社は残業をさせてばかりなので、労基に訴えてやる!」というのではなく、「仕事には忙しい時期はあるし、自分たちの仕事があることを喜んで乗り越えよう!」という受け取り方です。

組織市民行動の尺度④礼儀正しさ

礼儀正しさには様々な種類の行動が含まれます。基本的な社会人としてのマナーだけでなく、同僚の足を引っ張ったり、他人の権利を悪用したりしないことが重要です。

同僚が別件で離れているときに代理で電話を受けた際に、その内容をしっかりと伝えることが求められます。ここでいい加減な電話対応を行ったり、内容を不正確に伝えたりするのは組織市民行動に反する行為です。自分に関係ないからと適当な対応を行わないようにしましょう。

職場における従業員の報連相をしっかりと行うことで、礼儀正しさの尺度を満たすことにつながります。他者のミスを事前に防ぐような行為も重要なので、日頃から周囲をよく観察しておくのがおすすめです。

組織市民行動の尺度⑤市民の美徳

市民の美徳というのは、組織に属するものとしての責任感から来る行動を意味します。つまり、上司などから具体例を提示されなくても、自然と所属する会社にとって必要なことは自分から行うことが大切です。自分の会社や職場を大切に思っているなら、当たり前のこととして行うことを意味します。

具体例としては会社から指示されることなく、自分から必要だと感じた資格やスキルなどを取得することが挙げられます。会社によっては資格やスキル獲得を支援する制度が存在しますが、そういったものの有無に関係なく、自分から進んで知識の底上げを行うのは組織市民行動的な考えです。

また、普段から会社に所属する一員として、そのイメージを大切にしようと行動するのも同様になります。他の具体例としては、社内報や掲示物を丁寧にチェックしたり、会社の任意の集まりに参加したりするのも市民の美徳に該当する行動です。

会社に出勤していなくても組織に属す人間として、イメージアップにつながる行動を行いましょう。こういった行動が組織の活性化につながるのです。

組織市民行動を促す方法

部下に組織のビジョンを伝える

職場の組織市民行動を促す方法を紹介します。どのような取り組みを行えば職場内に組織市民行動が浸透していくのでしょうか?まずは部下に組織のビジョンを伝えることが大切です。自社の未来像を全員が理解しておくことで、そのゴールに向かっていくことができます。

そして、そのビジョンを達成するために必要なことを考えて行動するようになれば、自然と組織市民行動が実現できるのです。より良い環境作りや行動を行っていくことでビジョンに近づき、会社の業績もアップさせられるでしょう。

個人目標の設定や自己評価を適切に行うことも、組織市民行動を促していきます。自社の未来像を全体で共有して自分から積極的に動くメリットを部下に理解させてください。

OJTを実施する

組織市民行動を促すためにOJTの実施もおすすめです。OJTは職場内で行う教育訓練のことで、上司や先輩社員が指導担当者として職務遂行の上で必要な知識やスキルを指導します。こういった人材育成により、部下は上司が仕事で割り当てられたこと以上のことをしてくれている、と感じるようになるのです。

OJTを実施して教育を受けた部下は、同様に周囲に同じような接し方をするようになります。困ったときに力になったり、自分が教えられることを伝えるようになり、組織市民行動の考えを自然と身に着けた部下に育つのです。そのために定期的にOJTを行っていきましょう。

上司が部下をサポートする

OJTに近い考えですが、上司が仕事やプライベートを含めて部下を日頃からサポートしてあげてください。仕事を助けるだけでなく、悩みなどの相談に乗ってあげることも重要です。上司を尊敬するようになり、部下も同じように強力できることは助けるようになります。

上司が率先して手本を示す

上司は部下に対して率先して手本を示すようにしましょう。自分が組織市民行動の手本になるような行動を行うことで、この制度の意味や効果を理解してくれるからです。いきなりすべての部下が組織市民行動を取れるわけではありませんが、次第にその輪が広がっていきます。

従業員満足度を高める

組織市民行動の尺度で紹介したような考え方や行動を取るためには、会社に対するポジティブな意識が必要です。自分の行動で会社の業績がアップしてほしいと考えられるように従業員の満足度を高めるようにしましょう

福利厚生のアウトソーシングを導入したり、人事評価制度の見直しなどがおすすめです。報酬や見返りを求めないのが組織市民行動のポイントですが、そこに至るために従業員満足度を高められるような環境にしてください。

組織市民行動と似た考え方

考え方①心理的安全性

組織市民行動と似た考え方も紹介します。似た考え方に関する知識を身に着けておくことで、より理解が深まるでしょう。似た考え方として心理的安全性が挙げられます。

心理的安全性は職場でどのようなことを言っても拒絶されることがなく、罰せられる心配がない状態を意味します。ルールや制度で縛るのではなく、チームの上下関係がなく、自然とそういった雰囲気が作られることが心理的安全性です

従業員やチームの生産性を高める効果があり、自分の役割を一人ひとりが理解することにつながる考え方です。また、自分の仕事の意味や役割を理解し、それが会社にとって良い影響を与えると考えられるようになるなど、組織市民行動と似ている部分があるので覚えておきましょう。

考え方②セキュアベースリーダーシップと職場の基礎代謝

セキュアベースリーダーシップと職場の基礎代謝、という考え方も組織市民行動に似た考え方です。セキュアベースというのは安全基地を意味する言葉で、頼れるリーダーがいることで心理的な安心感が得られ、従業員それぞれの才能や意欲が解き放たれる効果があります。

職場の基礎代謝は、職場の負の要素が積み重なると従業員の能力が低下するため、それを取り除いていく考え方です。身体の不調を改善すると新陳代謝がアップするのと同じことが、職場でも起きると考えましょう。

セキュアベースリーダーシップも職場の基礎代謝も、組織の生産性をアップする効果がある点が組織市民行動と似た要素となっています

組織市民行動の仕組みを理解しておこう!

組織市民行動の仕組みを解説しました。見返りを求めることなく自発的に他者を支援する行動を意味しており、そのことで業績アップや組織の活性化につながります。組織市民行動の考え方を浸透させて、より良い企業に成長させていきましょう!

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