多角化の意味や具体的な成功例などを解説!
企業が様々なサービスを提供するようになり、主力事業以外の他の分野にも挑戦するようになっています。そういった企業の多角化戦略のメリットやデメリットについてまとめました。
多角化戦略にもいくつかの種類があるので、自社に最適な方法を取り入れましょう。また、今後の企業戦略のために具体的な成功例も最後に紹介しているのでチェックしてください。
多角化とは?
シェア拡大などを狙う事業戦略を指す言葉
多角化というのは「従来の主力事業以外に新しい製品やサービスを開始し、既存とは異なる分野のシェア獲得・拡大を狙う事業戦略」のことです。
既存と違う分野に挑戦することで、成功したときに大きな利益を得られる可能性があります。また、企業を大きくする上で重要な戦略であり、経営の分散化は企業経営を行う中でいずれ検討する課題です。
経営多角化の主な形態
経営多角化の主な携帯として、「本業中心型」、「関連多角化」、「非関連多角化」というものがあります。本業中心型では、あくまで本業をメインにして、多種多様な分野に進出する形です。
関連多角化は保有する複数の事業の技術などを相互関連させて、多角化を目指す形になります。非関連多角化はコングロマリットという言葉で表現されることもありますが、企業を買収・統合させて巨大な企業群を形成させることで分散化を目指す方法なので参考にしてください。
多角化戦略は「成長マトリックス」の戦略のひとつ
経営学者のイゴール・アンゾフは成長マトリックスの1つとして多角化戦略を提唱しました。「製品」と「市場」の2つの要素をもとに、新規と既存の視点から4つの戦略を考えたのです。それぞれどのような目的で商品やサービスを投入するかを考え、シェア拡大を検討する戦略になっています。
集中戦略との違い
多角化戦略とあわせて考える必要があるのが「集中戦略」です。幅広い分野に投資を行う多角化戦略に対して、集中戦略は「市場を限定して、競争の優位性を獲得する企業戦略」になります。
顧客を細かくリサーチし、製品を一つのゾーンに集中投資するのが特徴です。デメリットとして、その分野の成長が止まってしまった際に利益が減る可能性が高いので気をつけましょう。この戦略の場合は潤沢な資本力があれば、リスクを分散できる点が異なります。
企業を立ち上げた際、最初は集中戦略で無駄な投資を省いて効率化を図りましょう。競合他社に対して差別化を行ってください。そのため、集中戦略は個人事業主や中小企業に適した戦略です。
多角化戦略の分類
分類①水平型多角化戦略
では、多角化戦略の4つの分類について注目していきましょう。水平型多角化戦略というのは、企業が持つ技術を活用して、似た市場に異なる製品を提供する方法です。
この戦略は自動車製造業などに多く見られます。自家用車を製造していたメーカーがバイクやトラック、建設車両などに参入する形です。車を製造するノウハウはあるため、比較的チャレンジしやすい多角化戦略になっています。
分類②垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略の場合は、共通する顧客を持つ企業が行ってきたものを、一つの企業で全て網羅する戦略です。この戦略に該当するのは、飲食系のチェーンになります。
食品の生産や流通、加工などを全て一つの企業で網羅する形です。また、製造業でも部品の製造から販売までを行う場合も垂直型多角化戦略に該当します。飲食系や製造業の多角化を行う場合の参考にしてください。
分類③集中型多角化戦略
他社よりも差別化された製品を持つ場合は集中型多角化戦略がおすすめです。自社が持つ差別化された技術を、関連性の高い新分野に進出する形になります。代表的な成功例として、デジカメや一眼レフに使用するレンズの技術を医療機器分野に転用したものです。
分類④集成型多角化戦略
企業が持つ事業とは直接関連のない分野に進出するのは集成型多角化戦略になります。完全に異なる業界に進出することはメリットもデメリットも存在しますが、成功したときの利益も大きいです。
代表的な成功例として、コンビニがATMを設置した例になります。ATMを利用するついでにコンビニで買い物をしてもらう形ができ、顧客のニーズをうまく反映した形といえるでしょう。
企業を多角化するメリット
メリット①リスクを分散することができる
4つの分類ができる多角化戦略ですが、そのメリットも確認してください。まず、一番のメリットともいえるのがリスク分散につながる点です。
企業が安定して利益を上げていても、社会の変化によって企業環境が大きく変化することがあります。他社の技術革新により自社が大きなダメージを受けることもあり得るので、リスク分散をしておくことは大きなメリットがあります。
また、分散化しておくことで収益のピーク期が異なるのも注目点です。経営基盤を安定化するためにも多角化を検討してください。
メリット②シナジー効果が得られる
シナジー効果というのは「相乗効果」のことです。流通経路や販売組織、倉庫などを共通することで得られる効果など、様々な相乗効果が存在します。資産や人材、また技術や知識なども共有しながらプラス効果が得られるのがメリットです。
メリット③企業全体の経営の効率化に繋がる
多角化戦略を行うことで企業全体の経営の効率化につながります。一つの企業が複数の事業を同時に行うことでコスト削減につながる、という考え方です。
時には事業を行っている中で発生する副産物が、多角化戦略に利用できることもあるのです。そういった副産物がどういった利益を生み出せるか検討してください。
メリット④プロダクトライフサイクルへの対応が可能
企業を多角化することでプロダクトライフサイクルに対応できます。プロダクトライフサイクルというのは製品が開発期間から導入、成長、成熟を経て、衰退期を迎えるサイクルのことです。
どういった製品も必ずプロダクトライフサイクルを辿ることになり、再開発やリニューアルが必要になります。一つの分野に特化しているとプロダクトライフサイクルによる弊害が大きく出るため、分散化しているとそういった問題を軽減しやすくなるのです。
企業を多角化するデメリット
デメリット①中小企業にとっては不向きな経営戦略
多角化を行う上ではデメリットにも注意してください。多角化は様々なメリットがありますが、中小企業にとっては不向きな経営戦略になりやすいです。その理由は潤沢な経営資源と資本金が必要であり、中小企業はこれらの面で大企業のような戦略を取れないことが関係しています。
逆に中小企業は大企業と比較して、戦略を実行する機動力や意思決定の速さがあります。無理に分散化を行うよりも、差別化されたサービスや技術を活用し、限定的な集中投資のほうが成功しやすい点があるのです。こういった違いを検討しながら多角化の導入を検討してください。
デメリット②コスト削減が難しい
集中戦略と異なり、効率化やコスト削減が難しい点がデメリットです。事業ごとに性質の異なる経営資源を投入するため、丁寧にコストを検討しましょう。また、資源の中には人材も含まれており、人員転換が容易でないのも注意してください。人材育成のコストも集中戦略と比較して行う必要があります。
デメリット③莫大な損失を被る危険性がある
多角化を行う上では様々なデータを収集し、自社の強みを再確認する必要があります。そういったことを行わずに戦略を行うと膨大な損失が発生する危険性があるのです。
実際に多角化を行って失敗した企業も多く存在しており、その原因は知識や経験不足が関係していました。特に海外企業を子会社化した際にトラブルが発生しやすいようです。資源や人材を大量投資した上で失敗したときのデメリットは検討材料になります。
デメリット④経営が非効率になる可能性もある
デメリットとして経営が非効率になる可能性があります。これは、集中戦略と比較して、単一事業に大量発注によるコスト削減が行いにくい点があるからです。この戦略では、各事業で個別に発注する必要が多く、経営資源の重複なども起きやすくなります。
多角化経営を成功させるコツ
主力事業を徹底的に注力する
メリットとデメリットがある戦略ですが、うまく成功させるためのコツが存在します。この戦略の効果を発揮するためには、まずは主力事業を徹底的に注力しましょう。
潤沢な経営資源があってこそ分散化を行えるからです。経営資源を分散する余裕がなければ、共倒れにつながる可能性もあります。そのため、主力事業を安定させ、継続して利益を出せている状態でなければ、この戦略は導入しないほうが安全です。
また、経営資源を分散することで一時的に財政基盤が不安定になるので、こういったリスクに対応できる力が必要になります。自社の強みを再確認し、主力事業に注力する中で分散化を行いましょう。
横滑りを前提とした仕組みを作る
先程の本業に注力しながら、横滑りを前提とした仕組み作りを行ってください。他分野に転用できる生産ラインやノウハウが無ければ分散化は難しいです。既存の生産ラインなどを活かした新製品開発や他分野に挑戦することで、成功する可能性を高められます。
フランチャイズ契約を活用する
成功させるコツとしてフランチャイズを利用するのもおすすめです。フランチャイズ契約を行えば、一からノウハウを集める必要はなく、試行錯誤などの時間も不要になります。もちろん、フランチャイザーに売上高の一部を支払うなどの費用も必要ですが、安全性のある選択肢です。
自社だけでそういったデータを収集することは長期間の時間を必要とし、その間にも顧客のニーズはどんどん変化します。タイミングを逃せば分散化させた際に思った収益を上げられないこともあるでしょう。
そうならないためにもフランチャイザーと協力し、新事業を迅速的に展開するのがおすすめです。同時にフランチャイザーと協力する上で、相手と自社の経営理念や今後の事業戦略などもしっかりと確認してください。協力関係を長く続けられるような相手を選ぶことでより良い結果につながります。
多角化企業の成功事例
成功事例①ソニー株式会社
グローバル企業として成功を収めたソニー株式会社の成功事例を確認しましょう。ソニー株式会社は大企業として潤沢な資本と経済資源を保有していました。それを利用し映画事業や音楽事業、ゲーム事業など自社の強みを他分野に広げていったのです。
カメラ分野やスマホ分野でもソニー製品は注目を集めています。多角化の成功事例として代表的な存在といえるでしょう。同時にそういった広げた分野を継続して成功させる難しさを知る参考にもなります。
成功事例②ヤマハ株式会社
ヤマハという名前を聞いてどういった分野の商品を思い浮かべるでしょうか?ヤマハは音楽業界で成功を収めた後にバイクや英語教室、リゾート開発、半導体事業など他分野に進出しました。
すべての分野で成功したわけではなく、分散化がうまくいかなかった分野に関しては再整備を行って、不採算事業の整理も行っています。
成功事例③セブン&アイグループ
セブン&アイグループの傘下であるセブンイレブンは、日本で初めてコンビニエンスストアをオープンした企業であり、その後も事業を多角化して成功をおさめています。商品を必要な数だけ小ロットで入荷させる方法や飲料冷蔵庫の補充を裏から行う方法を考案しました。
コンビニとして成功をおさめた後に、チケット発券や銀行ATM、公共料金の収納も手掛けています。さらに事業を拡大し、現在はセブン&アイグループとしてイトーヨーカドーやそごう・西武の百貨店、コインランドリーやフィットネスス事業も手掛けています。
成功事例④富士フイルム株式会社
写真フィルム事業が主力事業である富士フイルム株式会社ですが、新しい分野に挑戦した成功例になります。フィルム事業はデジカメやケータイの登場で売上規模が縮小したのですが、化粧品関係、複合機を取り扱うドキュメント事業などの他分野に挑んで成功しました。
また、フィルム系のノウハウはデジカメを開発して販売する部門へと転用し、こちらでも成功しています。このように自社の商品が技術革新によってニーズが変わる中で、技術を転用して多角化した成功例として参考にしましょう。
多角化戦略を取り入れて企業を成長させよう!
多角化戦略のメリットやデメリットについて紹介しました。事業のリスクを軽減し、新しい分野で利益を得られる方法です。この戦略を取り入れる上では、自社の強みを理解し、うまく横滑りをさせる資源投資を行いましょう。メリットやデメリットをよく理解し、成功例を参考に自社の可能性を広げてください。