行動特性コンピテンシーの意味や活用法を知りたい!
労働人口が減少し人材確保が困難な現代においては、少ない人材でいかに生産性を向上させるかが大きな課題です。そのような中で、組織の役割に応じて業務を遂行する能力が高く、キャリアがなくても優秀な成果を発揮するハイパフォーマーな人は貴重な存在でしょう。
ハイパフォーマーな人に共通してみられる行動パターンである行動特性コンピテンシーを知ることは、組織の生産性向上に不可欠です。自社に必要な行動特性コンピテンシーを全従業員に周知し、採用活動に活かすことは、企業の業績アップに繋がるでしょう。
行動特性コンピテンシーとは?
ハイパフォーマーに共通する行動パターンのこと
組織において、高い業績や成果を上げるハイパフォーマーと呼ばれる人には、共通する行動特性があります。それをコンピテンシーと呼び、この行動特性コンピテンシーを分析し、従業員に周知させることで、生産性は大きく向上するでしょう。
様々な企業がキャリア重視の年功序列志向から成果主義志向に移行しつつある現代社会において、ハイパフォーマーな人材をいかに確保するかは重要な課題です。行動特性コンピテンシーを人事評価に導入することで、優秀な人材は適切な評価を受けることができるので、人材流出を防ぐことができるでしょう。
行動特性の主な位置づけ
社員の業績や能力を測る要素は知識、経験、スキル、資質、人格などです。この中で知識や経験、スキルは周りから見てすぐわかる情報で、伸ばすことが比較的容易にできます。これに対し、資質や人格などの人間性は複雑で、周りが見て判断することが困難です。特に意欲や価値観は簡単に変えることができません。
行動特性コンピテンシーはこの中間あたりに位置します。ある程度は周りから見て判断ができ、努力すれば身につけることが可能な要素です。
行動特性を導入する目的
行動特性コンピテンシーを検証し、従業員に周知することは生産性の向上に役立ちます。生産性が上がることにより、少ないコストで多くの利益を得ることができ、業績もアップするでしょう。
また、明確なコンピテンシーの発信は従業員に行動指針が示されることになります。それは従業員の意識改革へと繋がっていくでしょう。
行動特性が注目されている背景
社会のグローバル化に伴い、企業の仕組みが日本独特の年功序列型から成果主義型に移り変わりつつあります。そのような中で人事評価が会社に有意義に働くような評価の仕方に変わってきました。
成果の評価は個人の評価にとどまってしまいます。業績をあげるためには、成果を出した行動や背景を評価基準とし、それを会社の組織づくりに役立てていくことが必要であると認識されるようになってきました。
そこで注目されるようになったのが行動特性コンピテンシーです。成果を上げるための行動を知ることが、会社全体の生産性を上げ業績アップに繋がると注目されるようになってきました。
職種や業界によって行動特性は異なる
高い生産性をもたらす行動特性コンピテンシーですが、その行動特性は職種や業界によって大きく異なるため、学術的にこの行動がコンピテンシーであるという定義付けはできません。
各会社が成果を上げている従業員の行動を分析し、そこから自社に合った行動特性コンピテンシーを見つけていくことが、重要でしょう。
行動特性に注目すべき主な場面
行動特性をビジネスに活かして生産性を向上するためには、活用する場面にも注目する必要があります。行動特性は人事に関わる現場で主に役立つでしょう。
場面①採用現場
行動特性の分析が最も活かされる場面が採用の現場です。いくら優れた能力やキャリアを面接で主張しても、自社に合っていない行動特性では意味がありません。
入社希望者が会社が必要としている人物であるかを見極めるには、行動特性コンピテンシーを明確にし、それに適するかどうかを面接で判断する必要があります。
面接官の主観ではなく、自社で活躍するであろう人材を採用するには公平な採用基準を設定することも必要です。そのような採用基準の設定にも行動特性は重要な役割を果たすでしょう。
場面②入社後の人事評価や研修
近年、行動特性を基に人事評価を行うコンピテンシー評価が注目を集めています。コンピテンシー評価とは、ハイパフォーマーの行動観察やインタビューからその行動や思考の傾向を検証・分析して評価の項目や基準を設定していく評価基準を作成する手法です。
これにより評価の基準が明らかになるので、公平な評価が可能になります。従業員は具体的な目標が立てやすくなりモチベーションが上がるでしょう。
また、コンピテンシー評価を基に研修をすることは、社員を適材適所に配置するなどの人材マネジメントにも有効です。それにより、従業員は自分に適した場所で能力を発揮することができ、ストレスの軽減にも結びつきます。
優秀な若手社員に共通する具体的な行動特性
前述のように行動特性は職種や業界によって異なりますが、どのような企業でも共通する優秀な若手社員の行動特性があるので、具体的に説明していきましょう。
行動特性①誠実な対応
ビジネスを成功させるためには、信頼関係を築くことが非常に大切です。良い信頼関係を構築できる行動特性を持つ人間は、相手の気持ちをくみ取り誠実な対応ができる人といえるでしょう。
また、誠実な人は、その人間性から周囲に頼られ信用されるため、社内外の人脈を広げることができます。広い人間関係の形成は、会社の生産性向上につながるでしょう。
行動特性②ルールを守る
競争社会において他者より抜きでようと考え、得てしてルールを破るヒューマンファクターの行動をしてしまう場合があります。しかし、ルールを踏み外して得られる成果は本物の成果ではありません。どこかでほころびがでてしまうでしょう。
ルールを守ることによって、会社や人間社会の秩序は守られます。目的を達成するためには協力し合うことが必要で、協力には秩序の維持が不可欠です。
また、ルールの無い会社は社会で信用されません。ルールを守る社員のいる会社こそ、社会で信頼され、利益を上げることができる会社でしょう。
行動特性③マナーに気を付ける
ルール同様、ビジネスマナーがしっかり身についている人間のいる企業は社会から信用されます。特に若手社員の身だしなみや言葉遣いはその会社の印象に結びつくでしょう。
一度与えてしまった不快感を打ち消すことは至難の業です。日頃からマナーには気を配るように心がけましょう。
行動特性④チームワークを大切にする
組織で利益を追求する会社においては、チームワークが何よりも大切です。いくら有能な能力やキャリアを持っていてもそれをうまく引き出し、活用してくれる仲間がいなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
個人の才能が集結した時、能力が最も力を発揮します。個々に磨き上げた人間力をチームワークでさらに磨きをかけてください。
行動特性⑤伝達力がある
言葉の力はビジネスにおいて重要な要素です。自分の気持ちや熱意を言葉で率直に訴えることができる行動特性を持つ人間は、コミュニケーション能力を持つ人と言えるでしょう。
コミュニケーション能力のある人はキャリアがなくても周りからの信頼を得ることができ、ビジネスチャンスに結びつけることができます。特に会社のリーダーとなる人間には伝達力は不可欠でしょう。
行動特性⑥共感力や創造的態度を有している
他人に共感できる人も周囲に好感をもたれ、人から信頼される行動特性を持つ人間です。共感力を持つ人は常に社会のニーズに敏感なため、ビジネスにも活かされます。
また、キャリアがなくても創造力が豊かで好奇心が旺盛な若い人は行動特性を持つ人です。このような若手社員は、企業が成長し新しいビジネスを構築していく上で、重要な役割を担う存在となるでしょう。
行動特性⑦継続力がある
一つのことを諦めずに努力し続けることができる能力も、行動特性といえます。キャリアがなくても努力家の人は周囲からの人望が厚く、信頼関係を構築できるため、人間的にのびしろのある人です。
行動特性⑧情報収集能力が高い
知りたい情報を集める情報収集能力が高い人もハイパフォーマーな人材です。経験や知識、キャリアではベテラン社員には追い付けませんが、情報収集のためのアンテナの感度の高さは若手社員の優れた特性といえるでしょう。
優れた情報を見つけて収集し、それを正確に分析して業務に活かす能力は、会社の業績を伸ばすためには必要不可欠な要素です。そのような能力をもつ若手社員の行動特性をビジネスに活かしていくことが現在の情報社会では重要でしょう。
行動特性⑨学習意欲や状況把握能力が高い
目まぐるしい変化を繰り返している社会情勢の中、キャリアがなくても常に新しいことを学習し、成長していこうとする意欲を持つことが吸収力の高い若手社員には大切です。
また、ピンチの時に冷静な判断ができる状況把握能力も重要な行動特性です。判断が必要な状況で的確な意思決定ができる社員は将来的に有望といえるでしょう。
行動特性⑩企画提案力やクオリティが高い
若手社員の企画提案力とそのアイデアを形にしている能力は会社の業績をアップしていくための非常に重要な要素です。キャリアのない若手でも多くの企画を提案しやすい環境である会社は、成長を続けることのできる会社といえるでしょう。
また仕事のクオリティを高めていくことができることも行動特性の一つです。若手であっても品質の向上に努めていく姿勢はプロとしての自覚に表れであり、顧客に支持されるでしょう。
行動特性の導入方法
導入方法①基本要素を類型化する
行動特性を導入するにはまずハイパフォーマーな人物を調査して行動特性の基本要素を導きだし、その抽出した要素を羅列してコンピテンシー・ディクショナリーと呼ばれる類型化をしていきます。
行動特性は企業の職種や業態、規模によって様々なので、コンピテンシー・ディクショナリーに決まった類型はありませんが、基本的な共通する要素はあるので、行動特性導入の材料の一つになるでしょう。
導入方法②モデルを組み立てていく
次に、会社の中でハイパフォーマーとされる人物から調査して抽出し、類型化した行動特性を自社の経営方針に合った形にモデル化していきます。
そのために大切なのが、その企業の企業理念やビジョンにあった好業績とは何かを定義づけることです。自社の経営戦略に必要な行動特性を選定し、モデル化することが重要でしょう。
導入方法③モデル化した行動特性の測定と運用
そして、実際にモデル化した行動特性を採用や評価に活かしていきます。その際に行動特性の評価項目を3~5段階程度にレベル付けしておくと、使いやすいでしょう。
レベル付けは公平性を保つためにも基準を明確にする必要があります。基準がしっかりしていれば、従業員自身の自己申告によって評価をすることもできるので、従業員のモチベーションも上がるでしょう。
運用にあたっては、その評価基準が適正であるかどうかの確認も必要です。いきなり全社に導入するのではなく、部分的に導入していき、コンピテンシーが自社に適しているか検証してから広めていくことが望ましいでしょう。
ビジネスで役立つ行動特性の活用法
活用法①人材開発に活用する
ハイパフォーマーの行動特性を検証し、コンピテンシーを導入して評価基準を明確にすることは、社員のスキルや能力のパフォーマンスを向上させる人材開発に活用できます。
また、各部署に合った行動特性を分析することで、従業員を適材適所に配置することが可能です。自分に合った仕事をすることで社員のモチベーションが向上するため生産性が高まり、企業の業績アップに結び付いていくでしょう。
活用法②評価制度に活用する
行動特性は成果だけでなく行動で評価するので、従業員は具体的な行動をイメージできます。行動特性を活かしたコンピテンシー評価は公平で明確な評価基準なので、従業員のやる気がアップし、業績向上が期待できるでしょう。
また、コンピテンシー評価は可視化されているので、努力が認められ、従業員の納得感が向上します。そのため、目標達成に向けて従業員が一体となって取り組む体制が作りやすくなるでしょう。
活用法③採用面接に活用する
会社の業績を伸ばすためには、自社の経営方針やビジョンにあった優秀な人材を採用することが重要な課題です。行動特性を基にした採用基準で面接をすることで、候補者が自社に必要な人材かどうかの見極めが容易になります。
具体的には候補者の過去の取り組みや将来へのビジョンをヒアリングし、ハイパフォーマーな社員の行動特性と客観的に比較して、自社に適した人材かどうかを判断します。このような採用面接により、自社の求める人材の獲得に成功するでしょう。
行動特性コンピテンシーを積極的に活用しよう!
社会が年功序列型から成果報酬型に変わりつつある現代、人事評価の仕方も変わってきています。そのような状況に適した人材の評価として注目されているのが行動特性コンピテンシーです。
優秀なハイパフォーマーの行動特性を分析し、採用や人材開発に積極的に活用することは、労働生産性を向上させ会社の業績アップに貢献するでしょう。