チェンジマネジメントを活用して組織変革を促す!
少子高齢化による労働人口の減少や市場のニーズの変化、技術革新のスピードが著しい現代社会において、組織変革が重要な課題となっています。
効率的に組織変革を成功に導く手法として注目されているのが、チェンジマネジメントです。チェンジマネジメントの成功事例やポイントを知って、チェンジマネジメントを活用した競争社会を生き抜ける組織変革を促してください。
チェンジマネジメントとは?
組織変革を効率良く成功に導く手法のこと
企業が成長を続けるためには、時代に合わせた柔軟な組織変革が必要不可欠です。組織変革の実現を効率的に成功に導くために組織に変化をうけいれやすくするためのマネジメント手法をチェンジマネジメントと言います。
効率よく組織を変革するためには、社員を巻き込むことが重要です。そのため社員全員の足並みをそろえて企業変革を行うチェンジマネジメントが大切でしょう。
チェンジマネジメントの起源
チェンジマネジメントの基礎となる考え方は、1993年にアメリカで発表されたビジネス・プロセス・リエンジニアリングの基本概念です。
このチェンジマネジメントの概念はアメリカのマサチューセッツ工科大学の教授であったマイケル・ハマー氏と経営コンサルタントであったジェイムズ・チャンピ―氏による共同著書である「リエンジニアリング革命」で著されました。
日本ではバブル崩壊後、苦境を脱するためには変革が必要だと考えられるようになり、企業の経営戦略の課題として取り入れられるようになってきました。
チェンジマネジメントが重要視されている背景
社会やビジネスの先行きが不透明で未来の予測が難しいVUCAの時代と言われている現在、企業の存続や業績向上のためには時代に合わせた変革が重要視されています。
テクノロジーが急激に進化し、人口減少による市場競争の激化や人手不足が深刻化している現代社会において、企業を取り巻く環境は日々変化しています。その変化に対応できる組織の構築が急務となっている中、効率的に組織変革を成功させるマネジメント手法であるチェンジマネジメントが非常に重要と言えるでしょう。
チェンジマネジメントの分類
個人単位のチェンジマネジメント
社員一人一人に対する変革を促すチェンジマネジメントを個人単位のチェンジマネジメントと言います。特定の社員に対し、業務内容の変更や新たな業務の指導方法などの計画を考え、変化を促します。
まず個人単位で分類してそれぞれの社員の特性を活かしたチェンジマネジメントを促して個人の考えを変化するようにすると、抵抗感を抑えながら変革に取り組めるようになり、生産性の高い業務へと結びつけられるでしょう。
プロジェクト単位のチェンジマネジメント
社員一人一人の変革を促した次に必要なのが、一定数の社員が集まるプロジェクト単位の変革です。プロジェクトのリーダーを中心に変革すべきプロジェクトを見極めて、どのような戦略で変化させていくべきかを明確にすることが重要でしょう。
そしてリーダーはメンバーに対してどのような取り組みが変革のために必要か、変革のためにはどのような知識や技術を得る必要があるかなどの気付きを与え、変革を促していきます。プロジェクト単位でのチェンジマネジメントによって、メンバー間の団結が生まれ、スムーズな改革に取り組みやすくなるでしょう。
組織単位のチェンジマネジメント
最後に企業や事業組織などの組織単位でのチェンジマネジメントに取り組みます。組織単位のチェンジマネジメントでは市場のニーズや技術革新、社会の変化にどのように対応していくかを明確にして、戦略的に組織改革を進めていくとよいでしょう。
組織単位でのチェンジマネジメントに取り組む際、並行して効率的に組織変革を行えるような組織づくりを行う必要があります。そして、組織変革に向けて各プロジェクトや一人一人の社員が自分達の行うべき行動を明確にし、組織全体で目標に向かっていくことで、組織の成長へと結びつくでしょう。
チェンジマネジメントの阻害要因
効率的に組織変革を成功に導くチェンジマネジメントですが、上手く進まない場合もあります。その阻害要因はチェンジモンスターと呼ばれ、いくつかの事例があるので解説しましょう。
阻害要因①タコツボドン
自分の担当以外のことを拒否し、他の部署からの関与を拒絶する人をタコつぼに閉じこもり周りとのつながりをもとうとしないタコに例えてタコツボドンと呼びます。
タコツボドンの社員やリーダーが存在すると組織内での業務の連携が妨げられるので、チェンジマネジメントを進めるうえで阻害要因となるでしょう。
阻害要因②ウチムキング
組織や部署内での評価ばかりを重視して、顧客や社会からの評価をおろそかにする人をウチムキングと呼びます。ウチムキングの人は市場のニーズの変化やテクノロジーの進化など社会情勢を広い視野でみることができないので、会社の変革への取り組みを理解できず、チェンジマネジメントに反発するため、阻害要因となるでしょう。
阻害要因③ノラクラ
組織がチェンジマネジメントの必要性を説明しても、マイナスな意見ばかりを述べて行動しない人をのらりくらりと弁明をする人を指してノラクラと呼びます。
ノラクラの人は、変革を提案された時、必要性を考えようとせずできない理由ばかり述べるので、チェンジマネジメントが進まない要因になると共に、周りのモチベーションも下げる存在になってしまうので、注意が必要です。
阻害要因④カイケツゼロ
組織やチェンジマネジメントに対して問題点ばかりを指摘して、自分で解決する気がない人をカイケツゼロと呼びます。カイケツゼロの人はノラクラの人と同様、チェンジマネジメントに対してネガティブな意見しか言わないので、周りの社員のチェンジマネジメントへのモチベーションも下げてしまうので注意しましょう。
チェンジマネジメントを成功に導くポイント
チェンジマネジメントを成功に導くには、8段階のプロセスがあります。プロセスに添って前向きに組織変革を進めていきましょう。
ポイント①危機意識を高める
チェンジマネジメントを行う時、まず変革の必要性を理解してもらうために社員の危機意識を高め、共有することが大切です。
危険意識を高めるためには、社会情勢や競合他社の脅威、市場のニーズの変化などを分析し、競争社会を生き抜くためには組織変革が不可欠であることを社員全員が納得できるように説明をする必要があるでしょう。
ポイント②変革に取り組む連帯チームを編成する
社員の危機意識を高め共有することができたら、変革に取り組むための連帯チームを編成します。チームの編成方法はまず、プロジェクトを進める能力が高い人や社員に対する影響力の高い人を優先的に集めて、変革の計画・遂行の中心とします。
彼らはチェンジマネジメントを行う重要な役割を果たす人材となるので、過去の実績や将来性などを踏まえて慎重に選出する必要があるでしょう。
ポイント③ビジョンを明確にする
チェンジマネジメントを成功に導くためには、変革に向けての具体的なビジョンを明確にする必要があります。明確にするビジョンは、企業が最終的にどのような状態を目指しているのか、実現可能な目標か、簡潔に説明できる内容か、柔軟性のある変革かなどのポイントを意識して考えると方針がブレずに目標を達成できるでしょう。
ポイント④ビジョンを社員に周知する
ビジョンが明確になったら、その内容をすべての社員に周知徹底する必要があります。ビジョンを明確にする際に意識したポイントに沿って、一人一人にチェンジマネジメントのビジョンの詳細を丁寧に伝えましょう。
そして個人の変革に対する意識を高めることによりチェンジマネジメントの必要性を理解してもらい、社員全員に周知します。
ポイント⑤社員の自発的な行動を促す
社員に伝えられ周知されたビジョンは、自発的な行動に結びつける必要があります。社員のさらなる自発的な行動を促すためには十分なサポートが重要でしょう。事例としては、ビジョンに向けた行動のリストアップやビジョンに向けた行動の評価基準を設ける、リーダーが手本となる行動をするなどです。
これらのサポートにより、一人一人が変革に向けて主体的に行動をしようという認識ができ、チェンジマネジメントに向けた行動を取りやすくなるでしょう。
ポイント⑥短期目標を実現する
組織変革に向けてのビジョンは、長期的な目標です。社員のモチベーションを維持し続けるためには、短期的な目標を設定しそれを評価の対象にすることも必要でしょう。
短期的な目標を達成することにより、変革が成功に向かっていることが、実感できます。達成できた目標は全社員で共有し、社員のやる気をアップすることが、チェンジマネジメントを成功に導くためには重要でしょう。
ポイント⑦達成した目標を活かす
チェンジマネジメントを成功に導くためには、達成した短期目標を活かし、企業が目指すビジョンに近づいていることを実感し、さらなる変革を推進していきます。
そして達成した目標を意識すると共に、チェンジマネジメントの阻害要因を明確にし、改善や修正をしていくことも必要でしょう。
ポイント⑧新たな手法を企業に定着させる
短期目標で達成できた組織改革の有効な手法は、社員に周知することで組織内で浸透させます。そのようにして新たな手法を少しずつ企業に定着させていくことで、多くの従業員に変革の重要性が理解されていくでしょう。そして、最終目標であるビジョンに沿った業務や制度を定着することで、チェンジマネジメントは完了です。
そして、これまでの取り組みを検証して変革と成功の因果関係を明確にし、全社員に詳しく説明します。この説明を聞き、社員たちがチェンジマネジメントの成功を実感することで、変革に対するモチベーションが上がり、継続的に効率の良いチェンジマネジメントを続けていけるでしょう。
チェンジマネジメントの成功事例
社会情勢の変化に伴い、重要視され始めているチェンジマネジメントに早くから取り組み成功している企業の成功事例を紹介しましょう。
成功事例①富士フィルム株式会社
フィルム事業大手の富士フィルム株式会社は、「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける」との企業理念の下、継続的に成長し続ける企業を目指してチェンジマネジメントを進めている企業です。
具体的な事例としては、まず課長クラスの役割についている社員に対して自己評価ツールを活用してリーダーとしての特性を客観視させ、意識改革に取り組みます。リーダーたちは、今後取るべきリーダー像を再構築し、チームとして課題に取り組む体制で組織の事業構造の変革に成功していきました。
成功事例②Google Cloud Platform
カレンダーやドキュメント、メールなどのビジネス用インフラツールをクラウド化させるためにチェンジマネジメントを活用したのがクラウドエース社の Google Cloud Platformの事例です。
クラウドエース社では、社員にチェンジマネジメントに取り組む理由を端的で分かりやすく伝え、チェンジマネジメントの重要性を理解してもらうように努めています。また、チェンジモンスターを回避するために社員に与える影響を考えながら改革を進めることで、サービスのクラウド化に成功しました。
成功事例③アドビ システムズ日本法人
ソフトウエア関連会社大手のアドビ システムズ日本法人は「世界を変えるデジタル体験を」という経営理念のもとでチェンジマネジメントを進めている企業です。
アドビ システムズ日本法人でのチェンジマネジメントの事例は、主力製品であるソフトウエアの提供形態を3つのクラウドに集約して、提供形態を「パッケージ販売モデル」から「サブスクリプションモデル」へ転換していきました。その際、社員の反発を招かないように丁寧な説明をしていき、2年半をかけてチェンジマネジメントを成功へ導いています。
成功事例④日産自動車株式会社
大手自動車メーカーの日産自動車では1990年代、業績低迷状態にありましたが、1999年にカルロス・ゴーン氏がCOOに就任し「リバイバル・プラン」と呼ばれるチェンジマネジメントに取り組んだ結果、わずか1年で業績をV字回復させました。
リバイバルプランでは稼働率の低い工場の閉鎖やそれに伴った従業員のリストラを行い、1兆円規模のコストカットを実現しました。その際、社員の不満が高まらないように変革に向けた専任チームを結成し、旧来の慣習や規定を見直して変革を推進しています。
また、ゴーン氏はなぜ、どのように日産は変わるべきかのビジョンを明確にし、社員や社会に発信することで、周囲の理解を得ながらチェンジマネジメントを進めていきました。
チェンジマネジメントを活用して組織変革を成功させよう!
人口減少による市場ニーズの変化が激しく、複雑化が進み将来の予測が難しい現代社会において、組織が存続するためには、時代に適応する変化を継続的に続ける必要があります。そのために注目されているのが、それぞれの企業に合った効果的なチェンジマネジメントです。
チェンジマネジメントの手法を上手く活用することで、組織変革を成功させていき、企業の成長に結び付けていきましょう。