行動理論の意味や問題点を知りたい!
近年、さまざまな分野で急速なグローバル化が進み、ビジネスにもさらなるスピードや多様性が求められるようになりました。こうした状況下で、グローバル化に対応できるリーダーシップ力を持つ人材育成が求められる中で、行動理論が活用されてきました。
この記事では、行動理論の言葉の意味やリーダーシップとの関係を説明します。また、リーダーシップ論の変容や、行動理論を仕事に活用する方法も紹介しますので、優れたリーダー育成に役立ててください。
行動理論とは?
リーダーシップに優れた人材を育成するために着目される行動理論は、仕事の場だけではなく、心理療法や健康維持など、幅広い分野で活用される理論です。ここでは、行動理論の言葉の意味や、リーダーシップとの関係、行動理論の問題点などについて説明します。
行動理論の言葉の意味
行動理論は、学習理論に基づいた考え方です。適切ではない状況を維持させたり悪化させたりするシステムが生まれるのは、不適切な学習や未学習によるものとし、別の学習により改善しようとする考え方を意味しています。
行動理論は認知療法や健康維持など、さまざまな分野で活用されていますが、仕事の場においても、リーダーシップを向上させるための理論として取り入れられています。
行動理論が誕生した経緯
1900年以降に研究されてきたリーダーシップ理論では、リーダーシップは生まれ持った個人の持つ資質であるとする特性理論が一般的でした。しかし、リーダーシップが先天的な資質だとすると、後天的に習得することができないことを意味します。そこで、より実用性のある理論が求められたことから、1940年代に行動理論が登場しました。
それまでの特性理論に対し、行動理論は、優れたリーダーの行動パターンを身に付けることで、リーダーシップが育成できるという意味があります。この行動理論によって、リーダーシップは行動を身に付けることで後天的に習得ができると理論づけられたため、現代のリーダーシップ教育に行動理論が活用されているのです。
行動理論とリーダーシップの関係性
ビジネスシーンで活用される行動理論は、これまでリーダーシップ理論の主流となってきた理論です。行動理論では、リーダーシップはもって生まれた特性ではなく、リーダーとして取るべき行動とされ、リーダーシップが教育によって習得可能であるとしました。
行動を身に付けることで誰でもリーダーシップを身に付けられる可能性があることから、人材育成において、行動理論が長く活用されてきたのです。
行動理論のパターン軸
行動理論では、特定の行動パターンを身に付けることにより、リーダーシップの実現が可能としているため、リーダーの行動モデルについて、多くの研究がなされてきました。これらの研究では、リーダーシップの行動を、2つの行動パターン軸によって定義していました。さらにこれらは二つのグループに分類することができます。
その一つが、「業績・仕事」と「人・組織」のどちらを重視するかという分類です。「ミシガン大学研究モデル」や、「マネジリアル・グリッド・モデル」と呼ばれる行動パターンが代表的です。
もう一つは、「論理(構造」と「感情(配慮)」のどちらを風刺するかという分類です。「オハイオ州立大学研究モデル」や「トランスフォーメーショナル・モデル」と呼ばれる行動パターンが代表的です。
行動理論の問題点
リーダーシップ行動は、さまざまな研究によって二軸化に定義され、人材育成に取り入れられてきました。しかし、行動理論には問題点もありました。
優れたリーダーの行動パターンを身に付けても、常に優れた力を発揮できるわけではないことがわかってきたのです。
これは、行動理論がリーダー個人の能力に着目された理論であるためでした。リーダー個人がいかに優れた行動パターンを身に付けても、チームの規模や取り巻く環境によって、常に優れたリーダーシップが発揮できるわけではないことが問題点だったのです。
こうして、限界が指摘された行動理論は、リーダーシップに影響を及ぼす状況が研究されることとなり、「状況適応理論」が主流となっていきました。
行動理論の種類
リーダーシップ理論と関連して語られることの多い行動理論。しかし、本来の「適切な学習によって、不適切な状況を改善する」という理論は、人材育成以外にも、さまざまな分野で活用されています。ここでは、仕事の場以外で活用される行動理論について紹介していきます。
健康行動理論
健康行動理論とは、人が健康によい行動を行うための条件を示したもののことです。健康行動理論を活用して、人が健康によい行動を起こすポイントを探り、やる気の出るような働きかけを行う、という考え方です。健康行動理論には、健康信念モデルや社会的認知理論、変化のステージモデルなど、多くの理論があります。
心理療法における行動理論
心理療法においての行動理論も、その背景は学習理論となっています。目に見える「行動」をターゲットとし、問題となる行動を制御することが目的です。学習理論と同義とされる「条件付け」は盛んに研究され、医療の他にも、リハビリテーション、障害のある子どもの療育、犯罪者の矯正など、さまざまな分野で活用されてきました。
認知心理学における行動理論
認知心理学は、知識を習得し、認識することにかかわる心理的過程(情報処理)を研究する学問です。コンピューターの発展によって盛んとなった情報科学の考え方を心理学に取り入れることで発展してきました。
心にどのように情報が入力され、使用されているのかという情報処理の観点にもとづいて心のメカニズムを解明しようとしたものです。この認知心理学においての行動理論は、人は認知を変えることで、感情や行動を変えるという視点考え方です。
行動理論における理想のリーダーシップ像
これまで行動理論についてさまざまな研究がなされる中で、理想のリーダーシップモデルについても多くの研究結果があげられています。ここでは、それぞれのリーダーシップ像について解説します。
委任型リーダーシップ
委任型リーダーシップは、すでに仕事の遂行能力や高い意欲を持っている部下に仕事の進行を任せるスタイルです。
目標や課題の共通認識を話し合った後は部下のやり方に任せ、問題があればアドバイスするという関わり方となります。成熟度が高く、細かな判断基準などを説明する必要がないようなベテラン社員向けのスタイルと言えるでしょう。
相談型リーダーシップ
相談型リーダーシップとは、その名の通り、部下からの相談を受け、コミュニケーションを高めることでチームの協調性を生み出すリーダーシップです。
チーム内での信頼関係を築きやすく、行動理論の観点からは、「人・組織」重視型に分類されます。しかし、協調性が高まる一方で、メンバー内に甘えが生じる危険性をはらんでいます。また、自主性が生じにくいため、リーダー候補が育ちにくい環境でもあります。
指令命令型リーダーシップ
指令命令型リーダーシップとは、リーダーが指示を出すことで、リーダーの知識・経験を基にしてチーム作りを行うスタイルです。
行動理論においては、「業績・仕事」重視型に分類され、徹底したチーム管理に有効と考えられています。しかし、部下が指示待ち状態になってしまうことで、モチベーションの低下や自主性が育ちにくいことなどが課題です。
行動理論を仕事に活かす方法
さまざまな分野で活用されている行動理論を仕事に活かすにはどうしたらよいのでしょうか。ここからは、行動理論を仕事に活かす方法を紹介します。
人材育成や能力開発に活用する
現在の人材育成や能力開発ブログラムの多くに行動理論が活用されています。二つに軸によって定義されたリーダー行動の行動パターンを基にして、人材育成・能力開発の方向性を見極めることができるのです。
人材管理能力の向上に活用する
行動理論を学んで活用することで、部下やチームのメンバーのモチベーションを向上することが可能となります。そのことは、優秀な人材も確保にもつながります。リーダーシップの分類の学習により、適切に機能する組織の構築が可能となり、適切な人材管理能力の向上へとつなげることができるのです。
リーダーシップ力の強化に活用する
リーダーシップの強化に用いられている行動理論に、PM理論があります。PM理論は、1966年に三隅二不二氏によって提唱された理論です。PM理論とは、リーダーシップ行動を目標達成機能(パフォーマンス)と集団維持能力(メンテナンス)の二つの軸で定義するものです。PとMそれぞれの強さによって4つに分類されています。
PM(目標達成より集団維持を重視)、PM(目標達成・集団維持ともに重視)、Pm(集団維持より目標達成を重視)、pm(目標達成・集団維持ともに軽視)の4つの分類です。育成対象の人材が、どの分類に当てはまるのかを見極めて教育を行うことで、行動理論をリーダーシップ力の強化に活用することができます。
行動理論を活用して優れたリーダーを育成しよう!
リーダーシップ力の育成に欠かせない行動理論は、さまざまな研究が重ねられ、問題点が指摘されながらも、現在も幅広い分野で活用されています。この記事を参考に、行動理論を学ぶことでリーダーシップへの理解を深め、優秀なリーダーの育成に役立ててください。